The eagle has landed (4)

2010/05/21 23:41


ラードル中佐がチャンネル諸島の一つオーデニーに飛び立ったところまで書いた。一人でではない。そのとき、彼には連れがいた。リーアム・デブリンである。

オーデニーでは、スタイナー中佐と彼の部下たちがメカジキ作戦と言う名の懲罰を受けている。事態は一刻を争った。そのミッションは特攻に等しいものだったからである。

オーデニーは、チャンネル諸島の中でも最も北に位置し、またフランスに最も近い島である。イギリス領だったが、1940年にドイツが容赦なく西へ進撃すると、島民は島を捨てて逃げた。ドイツはここを要塞化し、収容所まで設けていた。

この島では、ハンス・ノイホフ大佐が臨時の司令官を務めていた。ラードルは、島に到着すると、早速ヒトラーの密書を彼に見せ、メカジキ作戦の中止を要請する。
このとき、当初ラードルが把握していたスタイナー以下30名の兵員は、わずか15名にまで半減していた。
ノイホフは、スタイナーが非常に優れた軍人であり、ここで死ぬよりは生きてドイツのために役立ってもらいたいと考えていたので、心底から喜んでラードルの要請を受ける。

こうして、ラードル、そしてデブリンの二人はシュタイナーと面会と相成るわけだが、ノイホフはじめ島の軍人たちは私服のデブリンをゲシュタポという目で見ている。また、デブリン自身もそれを面白がっていて、否定するそぶりも見せない。

ノイホフからスタイナーたちの居場所を聞いた二人は、そこから400mほど離れた彼らが詰め所にしている港に近い宿を目指して歩いた。その二人を車が追い抜いていく。ノイホフの命により、ゲシュタポの到着を知らせるためだ。

港では、リッター・ノイマンが潜水服姿で魚雷に跨っていた。そこにブラント上級曹長が現れた。
「いったい何を慌てている」ノイマンの問いにブラントが「ベルリンから将校が到着しました」と告げる。
「しかも、私服が一人着いています」
「私服?」
「はい。民間人のようですが、実はそうではありません」
ゲシュタポ?」
「そのようです。今、われわれの所に向かっています」
「それで、うちの若い衆はそのことを知っているのか」
「はい。もしも奴らが大佐に近づいたら鎖を足に巻きつけて海に沈めるつもりでいます」
「よし。おまえは直ちにパブに戻ってそいつらを留めておけ。俺は、車で大佐に事態を伝えに行く」

そのころ、スタイナーは、ノイホフ夫人であるイルゼと防波堤にいた。イルゼは元歌手で、この島で最も兵士たちの人気を集めている美しい女性である。
スタイナーとイルゼはこの場面からも分るとおり、お互いに好きあってはいるが、ロマンスには発展しない。イルゼは、むしろタロット占い師として、この小説での役割を得ている。

その辺はまた、次回書こう。