SOHについて

2010/07/30 00:15

先日は皮肉について書いた。皮肉を解さない人というのは、おそらくウィットやユーモアやジョークも分からない人なのに違いない。

いつだったか、BSで「翼よ あれが巴里の灯だ」をやっていた。最後までは見なかったが、なかなか楽しい映画だと思った。

リンドバーグをはじめて知ったのは小学生のときだった。5年か6年のときだったと思う。国語の補助教材か何かに次のような話が載っていたのである。

「スピリットオブセントルイス号で太平洋無着陸横断飛行を成功させたリンドバーグは、その祝賀パーティで有名なスピーチを残している。
壇に上がった彼は、集まった客をさっと見渡すと、徐に口を開いた。
『皆さん。話すことの出来る鳥、鸚鵡は飛ぶことは余り上手ではないのです』
これだけ言うと、彼は壇を降りはじめた。一瞬の水を打ったような静寂の後、万雷の拍手が沸き起こった」

わたしは、この話を○○年経った今も良く憶えている。正直、このウィットとユーモアにはいたく心を打たれた。わたしも生涯に一度でいいからこういうことを言ってみたいものだと思った。

BSの中でも、リンドバーグはたくまざるユーモアの精神を発揮していた。
なかでも、牧師に飛行機の操縦を教えるシーンが傑作だった。
この牧師はリンドバーグの父親くらいの年齢で、彼のことを大変気にいっている様子である。しかし、非常に運動神経が悪くて、飛ぶことはおろか、車の運転さえできるかどうか疑わしいという人物である。
案の定、リンドバーグが肝を潰しそうになるほどの危なっかしい飛行を続けた後、墜落にも等しい着陸をする。
リンドバーグはため息をつきながら尋ねる。
「どうしてあなたはそんなに空を飛びたいのですか」
すると牧師。
「空高く舞い上がれば神様に近づくような気がするからだよ」
これに対してリンドバーグは、
「いや、ファーザー。あなたが最も神様に近づいたのは舞い上がったときではなく、着陸のときでしたよ」と応じるのである。

話は変わるが、キュート9チャンというMX-TVの番組でも面白いジョークをやっていた。
あるフランス系(だったと思う)の女性のジョークが面白かった。いや、ジョーク自体は月並みなのだが、このジョークを新作落語にした人を知っていたので面白いと思ったのだ。

「ある病院に赤毛の女性がやってきた。先生が「どうしました?」と訊くと「先生。全身が痛くてしようがないんです」という。
先生は、よほどの病気か怪我かと思って、さらに詳しく聞いてみると、頭もちょっと触れただけで痛いし、おなかも背中も足も、触れるところすべてが痛いのだという。しかし、先生がその女性に触れてみてもまったく痛みは訴えない。
そこで先生、この赤毛の患者に向かってこう言ったのだそうだ。
あなたのほんとの髪の色はブロンドではありませんか」
すると、この患者、びっくりして
「えっ! 先生、なんで分かったんですか?」
「だって、あなた。あなたはただ人差し指を骨折しているだけじゃないですか」

このジョークは、日本人にはちょっと分かりにくいかも知れない。ブロンド=ばかな女というジョークの基礎知識が必要だからである。
ところで、このジョークを新作落語にしたのは桂文珍である。これは、大変によくできていて面白かった。ブロンドをおばあさんに変えた換骨奪胎の作品だが、機会があれば是非聞いてみていただきたい。