対称

2013/04/22 10:48


対称という言葉もまた一見シンプルである。ただ、数学的、あるいは物理学的な意味にとると、この一見シンプルな言葉も大変難しいものになる。

わたしは、ちょっとばかり尾篭というか下品な話で気が引けるのだが、男女の対称性について書いてみたい。

プロスタグランジンというよく名の知られた物質がある。英語で書くと、prostaglandin となる。prostateというのは前立腺のことで、雄のみがもつ器官である。
プロスタグランジンは、前立腺液に限らず人体のあらゆるところに存在するが、その名前の由来は豚の前立腺液から発見されたことによる。
これと、もう一つの臓器、子宮である。なぜ唐突に子宮か。それは、前立腺と子宮とが発生学的には雌雄対称の臓器だからである。
対称の証拠として、その生殖のシーケンスの課程で子宮が精子を吸収する必要がある。このとき、子宮はスポイトのような動き、すなわち筋縮と弛緩を短時間のうちに行う。この収縮のきっかけになるのが prostaglandin なのである。どうだろう、雌雄はここまで対称にできていることに驚かされはしないだろうか。

そして、クロロフィル葉緑素)とヘモグロビン。これもまた実に対称にできている。
クロロフィルは緑色であり、ヘモグロビンは赤。クロロフィルとヘモグロビンはその化学構造上も非常によく似ていて、ヘモグロビンの中心に鉄が存在するのに対し、クロロフィルの場合にはこれがマグネシウムに置き換わる。
さらに、わたしがこの両者を対称的だと考えるのは、生物の雌雄にも似てお互いに補完関係ともいうべき役割を果たしているからである。
すなわち、クロロフィルは植物に存在していて光合成により酸素とでんぷんを生産する。ヘモグロビンは動物の血液に存在していて酸素と結びつきこれを体内の隅々にまで運搬する役を担っている。

世の中はシンメトリカルにできている。そしてそれは、なにも幾何学的な対称性とは限らない。これはわたしがいつも感じていることである。