奔訳 白牙40

2017/04/18 22:11

再び飢餓がやってきて、灰色の仔は噛みつかれるような空腹をはっきりと意識した。雌狼は、彼女自身も痩せ衰えながら必死で肉を求めて走った。彼女は、もはや洞窟の中で眠りにつくことはほとんどななく、一日中狩に費やしたが、その成果はなかった。今度の飢餓はそれほど長くなかったが、とても厳しいものであった。灰色の仔は母親の胸に吸い付いたが、乳も出なければ一口の肉にもありつけなかった。

以前、彼にとっての狩は大きな喜びであったが、今はもう命を賭けて真剣に取り組んだが、何も得られなかった。しかしながら、その失敗が彼の成長を加速させた。彼は栗鼠の特性を慎重に研究し、そして巧みに忍んで襲い、そして待ち伏せて襲った。彼はまた地鼠も研究しその巣を掘り返した。とりわけ、ムースバードとキツツキについては熱心に学んだ。そうしているうちに、鷹の影が近づいてきても藪の中に逃げ込まないようになっていた。彼は強く賢く、そして自信に満ちてきた。そして必死であった。彼は開けたところにわざと目立つように座り込み、鷹が空高くから自分めがけて降りてくるのを待った。なぜなら、空高く舞っているものが彼の求めてやまない肉であることを知っていたからである。しかし鷹は、降りてきて戦うつもりはないらしく、灰色の仔は薮の中に腹這いになって入り込むと失望と空腹に泣き声を上げた。

飢餓が終わった。雌狼が肉を持って巣に帰ってきたのである。これまでに彼女が捕えてきたものとは違う変わった肉だった。それは、彼と同じようにまだ成長さなかの、あまり大きくはない山猫の仔だったのである。それを丸ごと彼は与えられた。彼の母親はどこかで空腹を満たしていたのだ。しかし彼は、彼女を満足させたものが残りの山猫の仔たちであったことを知らなかった。また彼は、彼女がその成果を得るためにどれだけ必死であったかなど知る由もなかった。ただ彼は、そのベルベットのように柔らかな毛に包まれた仔猫の肉を一口喰うたびに喜びで満たされるのを感じるのみだったのである。

満腹になると行動は抑制され、灰色の仔は母親の傍らで眠りについた。彼は母親の唸り声で目を開けた。これまで一度も聞いたことがない恐ろしい唸り声であった。おそらくそれは、彼女にとっても生涯で上げた最も恐ろしい唸りであったであろう。それにはもちろん理由があったのだが、彼女以外にその由を知る者はなかった。山猫の巣は何の咎もなく荒らされたわけではなかったのである。ぎらつくような午後の光の中、洞窟の入口に腹這いになった山猫の母を灰色の仔は見た。その瞬間、背骨に沿って毛がさっと波のように逆立った。それはまさに恐怖そのものであり、本能が告げるまでもなかった。もしも見た目だけでは足りなければ、侵入者の激しい怒りから発せられる叫び声や、唸りから始まり突如高く掠れたようになって発せられる喚き声を聞けば十分であろう。