2020-01-19から1日間の記事一覧

奔訳 白牙40

2017/04/18 22:11 再び飢餓がやってきて、灰色の仔は噛みつかれるような空腹をはっきりと意識した。雌狼は、彼女自身も痩せ衰えながら必死で肉を求めて走った。彼女は、もはや洞窟の中で眠りにつくことはほとんどななく、一日中狩に費やしたが、その成果はな…

奔訳 白牙39

2017/04/14 13:34 第五章 肉の掟 灰色の仔の発達は目覚ましかった。二日間休んだだけで、再び洞窟を出て探検へと出かけたのである。そして、その探検の途中で彼は、彼が雌狼のご相伴に与った母鼬の幼い仔が母を探し回っているのを見た。今回の探検では、彼は…

奔訳 白牙38

2017/04/11 20:45 彼が泣き叫びながら後退さりしているうちに、母鼬は我が仔に飛びついて近くの藪の中に連れ去った。母鼬に傷つけられた首の傷は、実際の痛み以上に強く感じられ、彼はその場に座り込んで弱々しく泣き続けた。母鼬は小さな身体にも関わらずと…

奔訳 白牙37

2017/04/09 20:25 激流の下は二つ目の淀みで、彼はここで渦に捕まり、緩やかに岸へと運ばれて、そして緩やかに捨てられるように小石の河床へと投げ出されていった。彼は狂ったように足で水を掻いて岸に辿りついた。彼はまたここで世界について学んだのだった…

奔訳 白牙36

2017/04/09 11:20 しばらくして、ライチョウは静かになった。彼の方は片方の翼に喰らいついたままで、双方は地面に腹ばいになったまま睨みあった。彼は凶暴な唸り声を上げ相手を脅かそうとする。すると、その鼻面を彼女が突っついたので、これまでの突っつか…

奔訳 白牙35

2017/04/02 08:56 ビギナーズラックであった。狩る者として生まれ(もっとも彼はそのことを知らなかった)、初めて自分の巣であった洞窟を出て、すぐのところで肉と出くわしたのである。まさにそれは偶然の出来事であり、そのようなところにライチョウの巣が…

奔訳 白牙34

2017/03/20 13:09 しかし斜面は段々と緩やかになってゆき、草がその表面を覆うようになった。そして勢いが止まった。転がり落ちるのが止んだとき、彼は痛さから叫びを上げ、それから長い泣き声を上げ続けた。そして、ごく当然に、これまで人生で千回も排泄を…

奔訳 白牙33

2017/03/18 08:53 これまで彼が経験してきた他の壁とは違い、この壁は彼が近づけば近づくほど後退していくように見えた。柔らかな鼻を使い恐る恐る壁を突いてみようとしても硬いものに当たることはない。壁の材質は恰も光そのものであるかのように通り抜けた…

奔訳 白牙32

2017/03/14 20:38 よって、母親に示された法に従うこと、そして未だ見ぬものや知らぬものに対する感情、すなわち恐れに従うこと、彼はこれを守って洞窟の出口へは近寄らずにいた。故にそれは、彼にとってずっと光の白い壁であり続けた。母親がいないとき、彼…

奔訳 白牙31

2017/03/11 23:07 第四章 世界の壁 母親が狩のために巣を離れるようになったが、その頃には、仔は出口へ近づくことが禁じられている訳をよく理解するようになっていた。これまで何度となく母親の鼻先や前足で制されていたからというだけではなく、彼の中に恐…

奔訳 白牙30

2017/03/11 21:59 そして遂に、灰色の仔に、これまで壁の入口に現れたり消えたり、あるいは腹這いになって寝ていた父親の姿が二度と見えなくなる日がやってきた。それは、比較的緩やかな二度目の飢餓のときであった。雌狼はなぜ片目が帰ってこないのか知って…

奔訳 白牙29

2017/03/06 20:07 実際、灰色の仔にはまだ思考力が与えられておらず、少なくとも人間が考えるようには考えるということができなかった。彼の脳はぼんやりとしていたのである。しかし、彼の下す結論には人が到達する結論よりも鋭くまた深いものがあった。彼は…

奔訳 白牙28

2017/03/05 20:15 彼は幼いながらも凶暴であった。ただ、これは彼の兄弟姉妹たちにしても同じである。彼らはそのように生まれついたのだ。彼らは肉食獣なのである。獲物を殺しその肉を喰らうものとして生まれついた。父も母も肉のみで生きてきた。彼が生まれ…

奔訳 白牙27

2017/03/04 00:17 第三章 灰色の仔 彼は兄弟姉妹たちと違っていた。彼らの毛には既に雌狼から受け継いだ赤味が現れていたが、彼だけは特別に父親のそれを受け継いだようであった。彼だけが一腹の仔たちの中でただひとり灰色だったのである。彼は純粋な狼の血…

奔訳 白牙26

2017/02/28 06:26 ハリネズミは毬を開ききらないうちに敵に気がついた。その瞬間、山猫が前足のパンチを繰り出した。閃光のごとき速さであった。前足の硬い爪が猛禽の鉤爪のように弧を描き柔らかな腹をえぐって元の位置に戻った。もしもハリネズミが完全に毬…

奔訳 白牙25

2017/02/20 20:54 彼は、川床が通常よりも大きく曲がったところで岩の端に頭を擦り寄せるようにして前を伺ったが、そのとき眼の端に何かを捉えてしゃがみ込んだ。それは足跡の主、大きな牝の山猫であった。彼女は、朝彼がしゃがんだと同じようにそこにしゃが…

奔訳 白牙24

2017/02/14 19:42 ハリネズミは栗の毬のように丸くなり、防御のために長く鋭い針を全方向に向けて立てた。若い頃、片目はこれと同じような状況で針を立てた毬に近寄りすぎて、予期せぬ尻尾の一撃を顔に受けたことがある。針の一つが鼻に刺さって、その火のよ…

奔訳 白牙23

2017/02/09 20:20 連れは不安そうな目を彼に向けた。そうして、しばらくの間、彼女は低く唸り続けていたが、片目が一線を越えてしまったため、それまでのただの唸りだったものが一挙に牙をむき出しにした鋭い吠え声となって喉を突いて出た。それは、彼女自身…

奔訳 白牙22

2017/02/05 17:09 洞窟の入り口に横たわり気持ちよさそうに寝てはいるものの、片目は空腹だった。彼はふと起きあがると耳を立て明るい外界の様子を伺う。四月の日差しが雪の大地をてらつかせていた。実はまどろんでいた時、どこからか水の流れが滴り落ちる囁…

文化とエピジェネティック

2017/02/05 20:55 最近の研究によると、人間の文化とエピジェネティックには関係があるらしい。 小学生の頃、個が獲得した形質は子孫には遺伝しないと習ったが、これが嘘っぱちであったことがはっきりした。狼の雄が人間を恐れるのはそのY染色体上のDNAを修…

奔訳 白牙21

2017/01/03 20:50 第二章 巣 二日間、雌狼と片目はインディアンキャンプの傍をうろつき回った。片目は、連れがキャンプに魅了させらてしまったかのようにいつまでも離れたがらないのを横目に非常に不安で気がかりであった。ところがある朝、空気が切り裂かれ…

この男(ノーベル平和賞受賞者)は何をやったのか

2017/01/16 22:08 この男とは、オバマではない。今年94才になるベトナム戦争時代の国務長官、ヘンリーAキッシンジャーである。 ノーベル平和賞受賞者だが、その受賞理由というのがベトナム戦勝終結への道筋をつけたことだというから笑わせてくれる。可笑しい…

奔訳白牙 20

2017/01/03 17:13 その間もウサギは彼らの頭上高く舞っている。雌狼は雪の上に座り込んだままで、一方片目は、奇妙な枝よりもむしろ連れの怒りが怖くて再びウサギに向かって跳びついた。彼は歯にしっかりとウサギを咥えて枝をしならせたが、片時もその枝から…

奔訳 白牙19

2016/12/31 21:20 片目は彼女の傍を落ち着きなく歩いた。再び彼女は不満を募らせてきており、探していたものを早く探さねばならないことを思い出していたのだ。彼女は踵を返すと森の方へ駈け出したが、このことは片目を安堵させ、木々の中に身が隠れるまで前…

奔訳 白牙18

2016/12/31 18:28 この生殖を巡る戦いは、両側を二人のライバルに挟まれた三歳の若狼にとっての初陣であり彼の人生の成否がかかるものであった。彼らの目に映るのは雪の上に佇んで微笑を浮かべている一頭の雌狼である。しかし、老狼は賢かった。恋においても…

出来すぎ

2016/12/18 20:32 トランプ次期大統領がツィートでスペルを間違えたらしい。 しかも、シナがかっぱらおうとした無人潜水機の件でだ。 トランプが間違ったのは、シナが前代未聞(unprecedented)のことをやってくれた、と書きたかったところを、 unpresidente…

奔訳 白牙17

2016/06/08 13:54 今や休息したり眠っている狼がほとんでである。中には満腹でいがみ合ったり喧嘩を始めたりしている若い雄狼たちもいて、これが数日、群れがいくつかに分裂していくまで続いた。飢饉は去ったのである。狼たちは今、獲物が豊富な地域におり、…

ワンさんへ

2016/12/02 09:12 ワンさん、こんにちは。Kiyoppyです。 わたしには未満という言葉の意味がまだよく理解できていないようで、あいすみませんでした。なにしろ、20歳未満というのをわたしは、18歳と19歳のことだとばかり思っていましたから、はい、14,5の…

聖の青春を見た

2016/11/30 22:44 久しぶりにいい映画を見た。これは誰の原作だったのだろう。忘れてしまったが、もちろん、いい原作なしにはいい映画はできないであろうから、原作も褒めなければならない。 さらに言うなら、棋士村山聖の短い人生が素晴らしくなければ、そ…

第二夜(羅普騾素の悪夢)

2016/11/21 22:13 尾はなし、という夢の終わり方をしたので、この夢の話がおもしろかったのか、それともおもしろくなかったのかは分からないなぁー、などと、ぼんやり考えていたら、It's time to wake up, you lazy bastard.という怒鳴り声がして、そちらを…