2019-09-01から1ヶ月間の記事一覧

皆様、どうぞ、良いお年を

2011/12/31 19:25 皆様。本年もこれであと数時間を残すのみとなりました。今年は、未曾有の災害やら、その他にもいろいろなことがあり、忘れえぬ年となりました。どうぞ、皆様どうぞお健やかに来年をお迎えください。本年はお付き合いいただき、まことにあり…

輝虫(新昆虫記4)

2011/12/29 00:03 週刊新潮、川上未映子さんのオモロマンチック・ボムに次のような話が載っていた。 最近、わが子におかしな名前をつける親が増えているらしい(わたしは、川上女史こそ、自分のコラムによくもこんなおかしな名前をつけたな、と思っているの…

For whom the bell tolls

2011/12/24 00:09For whom the bell tolls 今、「誰がために鐘は鳴る」を読んでいる。言わずと知れたヘミングウェイの代表作の一つである。映画にもなって、ロベルトをゲーリー・クーパー、マリアをイングリッド・バーグマンが演じた。スペイン内戦を描いた…

wuthering heights を読んで

2011/12/04 14:00 嵐が丘と訳されるエリオット・ブロンテによるこの作を読んでみて、改めて感じることは、やはりその一貫した上品さである。ヒースクリフや下男のジョーゼフ、それにヒースクリフの悪意により、本来であれば地主の息子としてしかるべき教養を…

閃きについて

2011/11/24 19:42 歳をとってさっぱり閃かなくなったわたしの脳みそでも、ときに電池の切れかかった電球ほどの鈍い輝きを見せることがある。 たしか、レオナルド・ダ・ヴィンチだったと思うが、壁の染みにも人は様々なものを見ることができる、と言っている…

「天才の栄光と挫折」を読む

2011/11/23 18:28 数学者の生涯について書かれた本を読んで涙を流した。涙に鼻水も混じって大変な状態となった。これは大変な名著である。一人、数学者たちの栄光と挫折について書かれたものではない。その数学者を生んだ郷里や国の栄光や挫折にまで話が及ん…

新昆虫記

2011/11/22 09:22 辻まこと(虫類図譜)へのトリビュートとして本稿を記す。 1、自己虫 この虫はごくありふれており、蝿や蚊のごとく取り立てて記すことはない。しかし、その平凡さこそがこの虫の栄養であり、またイゴセントリック・ドグマという教条により…

蓮と鶏(金子みすゞ)

2011/11/18 21:47 蓮と鶏 泥のなかから 蓮が咲く。 それをするのは 蓮ぢゃない。 卵のなかから 鶏が出る。 それをするのは 鶏ぢゃない。 それに私は 気がついた。 それも私の せいぢゃない。 金子みすゞ この詩ほど「縁」というものについて考えさせてくれる…

椿事

2011/11/12 10:58 椿事(大椿は八千年に一度だけ花を咲かせるという。転じて有り得ないような話のことを言うようになった、とか) 日心会の内紛は、その標榜する「徳育」だとか「美しい日本の良い話」ということに反する非常に醜いものです。この醜さが内部…

右は右脳、左は左脳

2011/11/09 11:22 次は、わたしだけの感慨ではないと思う。なんと左(サヨ)には左脳使いが多く、右(ウヨ)には右脳使いの多いことか。 そもそも、マルクス・レーニン主義などというのは、これは政治的、理論的思想であって、一方天皇崇拝などという、わた…

一回性について

2011/11/07 10:55 流れる雲を見ていて、ふと思った。今わたしが見ている雲は秋の鰯雲だけれども、この雲の形は過去45億年の地球の歴史の中で、唯の一度しか現れたことのないものであるに違いない、などと。 わたしたちは、人間の命の儚さを一回性という非常…

不可知の知

2011/11/04 11:43 先日、アインシュタインの「世界に関して永遠に分からないことは、それを分かるということだ」という言葉に刺激を受けて、それから少し「世界」ということ、そして不可知ということについて考えてみた。 なぜ、アインシュタインの言葉から…

旧交を温める

2011/11/01 17:09 今日はオフだった。天気は良いがただ肌寒いのでシャツの上にピーコートを羽織って一人であちこち歩いた。今は本当に美しい季節である。太陽の角度のせいか、草花の放つ光が柔らかく、夏とは違って空気の色が全体に淡いので、木々や草花の色…

思いやりについて

2011/10/29 10:51 思いやり。いつごろからだろう、この言葉に嫌悪にも近い感情を持つようになったのは。 記憶は定かではないが、おそらく例の思いやり予算あたりからではなかろうか。 思いやり予算とは、米軍駐留費の一部を日本側が負担するというものである…

ディジタル思考とアナログ思考

2011/10/27 07:56 新聞によると、オリンパスの騒動が一段と大きくなっているようだ。 最初は、英国人の社長が解任された、という比較的小さな記事だった。ところが、火のないところに煙は立たないの諺の通り、やはり大きな火種が隠されていたようである。火…

右脳と左脳

2011/10/22 19:44 日本語というのは、ある言語学者の説によるとタミール語と非常に近いんだそうです。また、日本人というのは、他の言語圏の人たちが雑音としか感じない秋の虫の声に詩情を覚えるという世界でも極めて珍しい民族だそうです。そして、どうやら…

老狼陋巷に死すべし 第二部 明彦

第二部明彦1 君たちに問う。君たちは、この私が起こしたとされるあの忌まわしい事件のことをまだ憶えているか?いくら情報が氾濫し次から次へと新しい事件が起きる世の中とはいえ、あの事件、アルトルム社と丸木良也に関連する、というよりも公的にはこの私…

老狼陋巷に死すべし 第一部 鎮男

オマージュ 玄の森公園は、アートルム社の城下町と呼ばれる新信州市の高台にあり、そこからは、四季折々に装いを変える山々や、市街を縫うように流れる彩川を一望することができる。公園はとても広く、天文台付きの少年科学館や、真っ白な水をときおり間欠泉…

take the A Streetcar Named Desire

2011/10/22 19:40 バックにデューク・エリントンの「A列車で行こう」を流しながらお読みいただくと、より臨場感が期待できるものと信じます。 アホか、お前ら! いえいえ、もちろん皆様のことではありません。これは、わたしの大嫌いな井筒和幸氏がある雑誌…

死は生による最高の発明品である

2011/10/08 14:23 S・ジョブズは、スタンフォード大学の卒業生を前に「死は生による最高の発明品である」と説いた。わたしは、実はこの言葉を柳沢桂子さんの著書「われわれはなぜ死ぬのか」でも目にしたことがある。柳沢桂子さんは、生命科学者であり、その…

S・ジョブズを悼む

2011/10/06 10:36 とうとう、この日がやってきてしまった。スティーブ・ジョブズが亡くなってしまった。 ジョブズをなぜ、わたしなどが惜しむか。それは、氏のスタンフォード大学での名演説に感動し、それ以来、すっかり氏の生き方に魅了されてしまっていた…

子規の悟り

2011/09/12 22:03 「悟りといふ事は如何なる場合にも平気で死ぬる事かと思って居たのは間違ひで、悟りといふ事は如何なる場合にも平気で生きて居る事であつた」子規はこのように言っている。なるほどと肯かされる言葉ではある。けれども、本当にそうだろうか…

白昼夢

2011/08/29 21:39 もう何年前からだろう、歳をとったせいなのか、それとも友人がくれたある小説に一時のめり込んでしまったせいなのか、ちょくちょくと同じ、それもとても奇妙な夢を見るようになった。いつも明け方にその少女はやってきて、わたしをとても幸…

白昼夢2

2011/08/29 23:53 わたしは墓前に手向ける花を用意すると、彼の家を訪ねた。実は、彼の家はお寺だった。今は代替わりして、本来であればMが跡を継ぐはずであったのであろうが、彼の妹であるNが婿をとって寺をつないでいるのだった。そのお寺は、小学校の裏手…

白昼夢1

2011/08/29 23:52 もう何年前からになるだろう、歳をとったせいなのか、それとも友人がくれたある小説に一時のめり込んでしまったせいなのか、ちょくちょくと同じ、それもとても奇妙な夢を見るようになった。いつも明け方にその少女はやってきて、わたしをと…

サンダカン八番娼館2

2011/08/29 12:07 昨日からサンダカン八番娼館を読み始めた。 山崎朋子さんの本はこれが初めてだが、読み始めてすぐに、これはすごいと思った。すごいのは本の中身もだが、なによりも山崎さんのバイタリティである。そして、彼女の取材対象となったおサキさ…

予見の問題なのか(東電裁判に思う)

東電の旧経営陣と呼ばれる人たちに無罪の判決が出た。この裁判の争点は、大津波の予見性にあったという。 東電設計(東電の子会社)が注進に及んだ高さ15.7メートルの津波の可能性を3人の旧経営陣は確かに聞いていた。だから、少なくとも東電設計の予見(予…

Paradise Lost

2011/08/29 14:15 ある麗らかな浅春の日曜日、指を絡ませながら、トオルとミアは市の公園を歩いていた。 昼下がりのSOLが、ミアの白いカーディガンやベージュ色のプリーツスカートの皺にスミレ色の柔らかな影を作っている。――最近SOLの力が衰えてきているよ…

サンダカン八番娼館

2011/08/26 13:14 いつもながらの長文、どうぞご勘弁を。 サンダカン8番娼館という本をお読みになったことがおありでしょうか。そう言いながら、実はわたしはまだ読んだことがありません。ただ、今すぐにでも読んでみたいと思っています。なぜこれを読みた…

意志と心

2011/08/21 14:53 以前に意志というものについて駄文をものした。意志とは、自由意志などというように人間が自律的に何かを実行、または決定することである。そこでわたしが問題としたのは、自由とか自律とか言うけれども、本当にそうなのだろうか、というこ…