もう一つのルール

2009/12/19 17:08

  すみません。作者の名前を忘れましたが、有名なSF作家であった方です。森・・・、何とかさん。ええい、思い出せない。昔は記憶力がすこぶる良かったのですが、歳をとりました。

 でも、作者への失礼は許してもらうとして、この人のショートショートで大変印象に残っているものがあります。それが、「もう一つのルール」というタイトルの作品でした。

 ある未来。宇宙船に乗って少年がある惑星に着陸した。すると、宇宙船の窓に誰かが顔をくっつけるようにして中を覗き込んでいる。少年は、その好奇心の強そうな惑星の住人と仲良くなろうと考えた。それで、じゃんけんを試してみることにした。すると、その宇宙人は非常に頭が良いことが分かった。じゃんけんの意味をすぐに理解したのである。

 そうして何回も何回もじゃんけんをやっていくうちに、少年の方もだんだんとその宇宙人の表情が示す感情が分かってきた。そして、はたと気がついた。何かがおかしい。
 宇宙人は負けたときはもちろん、勝ったときにもがっかりした顔をするのである。嬉しそうな顔を示すのはあいこになったときだけだった。
 なんと、この宇宙人は勝ち負けなどにはまったく関心がなかったのだ。宇宙人が望んでいたのはあいこ、つまり2人の気持ちが一緒になることだったのである。

 さて、SFのショートショートというものは、SOWというエッセンスの濃縮液である。わたしたちは、イソップの寓意のようにこの作品から何を汲み出せるか。そこに読む側の想像力が必要になってくる。
 わたしであれば、さしずめこの宇宙人の姿にわたしたち日本人の特性を重ねるであろう。決して争って勝ち負けを競うのではなく、相手と力を合わせて双方が幸せを共有することの大切さを知っている国民。聖徳太子の教えである「和を似って貴しと為す」をずっと大事に守り続けてきた国民を、である。