白い牙

2013/05/31 08:45


ジャック・ロンドンの white fang を読み始めたばかり。これは、なかなか読みごたえがありそう。

まだ白い牙は現れない。she-wolfと呼ばれる雌オオカミが片目(One Eye)との間に5匹の仔を儲ける。そのうちのアルファ狼らしき一匹がやがて白い牙と呼ばれるおおかみとなるのであろう。

それにしてもジャック・ロンドンは狼や犬の生態をよく観察している。冒頭のシーンなどは北米の自然の過酷さが非常にうまく擬人法で表現されているが。これなどはその過酷さを自ら味わった者でなければ決して書けない。

たとえば、片目がLynxと遭遇する行。片目は妻子のために猟に出て、ライチョウを一羽仕留めて帰る道すがら、やはり仔のいるらしいLynxハリネズミを獲物にしようとしている場面に出くわす。そのハリネズミは往路、片目自身も仕留めようとしたのだが、とうとうその毬栗のように丸くなった完全防備の身体に手を焼いて諦めてしまったのである。

片目は、Lynxがどのようにハリネズミを仕留めるかそっと陰に隠れて、あわよくば漁夫の利を得ようと固唾を飲みながら見ている。このシーンは、人間的とも思え、こちらも手に汗を握ってしまう。

Lynxは辛抱に辛抱を重ねた末、ハリネズミがもはやLynxが去ってしまったものと油断して、身体を徐々に解きほぐしかけたところに閃光の一撃を与える。猛禽類の鉤爪のような爪で見事にハリネズミの腹を切り裂くのだが、自身も反撃を食らって鋭い針が鼻に刺さってしまう。火が付いたような痛さにLynxは悶え苦しむのだが、この辺りは、ジェリーのしっぺ返しを受けたトムを見るようで、ユーモアさえ漂っている。

結局Lynxは、再び丸くなってしまったハリネズミを諦めて巣に帰ってしまうのだが、片目はさらに待ち続ける。彼にはハリネズミがもう長くはもたないことが分かっていたのだ。
思った通りにライチョウハリネズミの両方を手にした片目は愛するshe-wolfと仔たちの待つ巣穴に戻るというわけである。

しかし、この後で、片目はLynxとあいまみえることになり、死闘の末に殺されてしまうのだ。

ところで、白い牙と荒野の呼び声は対になった小説だそうである。文明から野生、野生から文明へ、とそれぞれの主人公が辿る道が逆なのだ。
わたしの持つ本もこの両者がセットになっている。大いに楽しみである。