スプリングフィールドの狐ビックス5

2014/11/22 17:04

その間にも鶏の消失は続いていた。わたしがまだ巣の中の仔狐たちを裏切ってはいなかったからだ。
わたしは、鶏の犠牲を思うにつけ自分がアライグマよりも悪い奴のように思えてきた。叔父は怒り心頭に達していて、わたしが毎日のように森に出かけていることに対し鋭い言葉を飛ばし始めていたのである。

叔父を喜ばせるために、わたしは犬を連れて森へと向かい、丘の開けた部分にあった切り株の上に腰を降ろすと、犬に狐を探しに行くよう命じた。三分ほどして犬は戻ってきて、ハンターなら誰でも知っている舌の上を転がる声でこう告げた。
「キツネ!キツネ!キツネ!」
そして谷に向かって真っすぐ駆け下りていった。

それからしばらくして、わたしは彼らが戻ってくる声を聞いた。見ると、スカーフェースが川底から流れに沿ってぴょんぴょん飛び跳ねている。彼は軽快に浅瀬を二百ヤードほど走ると、そこから川を抜けてわたしのいる方に向かってきた。
わたしの姿を遮えぎるものが何もなかったにもかかわらず、彼はわたしに気が付かないようで、ときどき後ろを振り向いては犬の動きを気にかけながら丘を登ってきたのである。
そして、わたしからわずか十フィートほどのところまで来ると、わたしに背中を向けてしゃがみ込み、首を長く伸ばして犬の行動に興味津々の様子を示した。
犬のレンジャーは、川に着くまではずっと吠えていたのだが、そこで臭いを見失い途方にくれているようであった。そこで彼がやるべきだったことはたった一つで、両方の岸を上がったり下がったりして、狐がどこから川を出たかを突き止めることだったのだが。

わたしの目の前の狐は、犬の様子がよく見えるよう少しばかり姿勢を変え、人間のような如何にも興味が尽きないという様子で、犬がうろうろと円を描いて回るのを観察していた。
彼との距離があまりに近かったので、犬の姿が視界に入ったときに彼の肩の辺りの毛が逆立つのさえ分かった。わたしには、彼の肋骨内で心臓が大きく飛び跳ね、その眼が黄色く光るのが見えた。

わたしが見ていても、レンジャーが狐の仕掛けた水のトリックにまんまと騙されている姿は、おかしくてしかたがなかった。
狐は少しもじっとはしておらず、全身を喜びに揺らせていたが、さらによい視界を得ようと後足で立ちあがっては、とぼとぼとあちこちをうろつきまわっている犬を熱心に観察している。その口は、耳元まで裂けているように大きく開き、息を切らしているわけでもないのに、ずっと煩い音をたてて喘いでいる。いや、というよりもむしろ、犬がよくやるように嬉しさのあまりに音を立てて笑っていた。

スカーフェースは、犬が随分と長い時間そうして自分の臭跡を見つけられずに困り果てているのを見て、喜びを隠しきれずにくすくす笑っていたのである。ようやく犬がそれを見つけても、それにはすでに黴が生えるほど時間が経っているので追ってこれるはずもない。

犬がようやく丘を登ってくると、狐も静かに森の中へと消えていった。わたしはずっとそこで身を晒していたわけだが、風下であるうえにじっと身じろぎ一つしないでいたので、スカーフェースは、最も恐るべき敵の手の内に二十分間もいたことなどまったく知らなかったのだ。

レンジャーもわたしにまったく気が付かず、わたしと先ほどの狐との距離ほどのところを通り過ぎようとしたのだが、わたしが声をかけてやるとやっと気が付いて、追跡を止め、しかしまだ何か腑に落ちないという顔を見せながらわたしの足元に伏した。

このような喜劇は、何日にもわたって繰り返されたほんの一幕に過ぎない。しかし、これは川向こうのわが家からも丸見えだったのである。

叔父は毎日の鶏の消失にいよいよ我慢がならなくなって、彼自ら乗り出してきて丘の上に陣取った。すると、スカーフェースが川床の頓馬な犬を下に見ながら小走りに走っているではないか。そこで、叔父はスカーフェースが新たなる勝利にくすくす笑っているその背中に向けて非情の弾丸を放ったのである。