太陽の賛歌

2010/06/16 22:52


黴臭い梅雨に入ってしまった。早くも太陽と青い空が恋しい。

きらきら輝く紺青の海を見ていて思うのは、あの煌きの一つ一つが太陽の欠片だということだ。
木漏れ日を観察していても、複雑に葉と葉が重なり合い、奥にある葉が手前の葉に自分の影を落とし複雑な緑のシンフォニーを奏でている。風に揺られて出来る僅かの隙間がピンホールカメラとなって太陽の分身ともいうべき豹柄の模様を地面にばら撒いている。

太陽は常に地球の半分を支配し君臨してきた。疑うべくもない、神のごとき存在である。潜水艦の中で何ヶ月も生活している者を除いて、大抵の人間は太陽と共に起き、太陽が沈んでから寝るという生活を続けているから、地球に何十億の人間がいようと、人間の数だけ太陽があることは間違いない。これは勿論、動物や植物にとっても同じである。

太陽が太古の昔から神として崇められてきたのは何ら不思議ではない。太陽は、地球を隅なく照らし万人に公平に光を与え続けてきた。このような存在を神と称えずして何と呼ぼう。

いつものように話が飛躍するが、CO2の増加が叫ばれるようになって久しい。これは太陽の預金であった化石燃料を人類が湯水のごとく使いはじめたせいである。そのうえに酸素の生産工場たる熱帯雨林を文字通り切り売りしているのだから、CO2が増えるのは当たり前のことだ。

化石燃料というのは石油や天然ガスや石炭のことである。これらの燃料の可燃成分は主として水素と炭素である。水素が燃えれば水になるし炭素が燃えればCO2が発生する。

水素にしろ炭素にしろ燃えるには酸素が必要である。その酸素はいったいどのようにして供給されるのか。それは植物やバクテリアなど葉緑素を持つ生き物が光合成によってCO2を分解することにより産出される。つまり太陽によって酸素はリサイクルされ再び大気中や海水の中に注がれるのである。

何が言いたいか。化石燃料とはいっても、結局は太陽エネルギーなのである。これを下に簡単化してみる。

太陽のエネルギー→CO2から酸素を分離
C+O2=CO2→このとき上の太陽エネルギー相当分が放出される

酸素は、言わばバッテリーにおける電気のようなものである。エネルギーがチャージされた姿が酸素であり、ディスチャージされた姿がCO2である。

植物と動物とは互いに酸素とCO2をギブ&テイクしながら仲良く共生してきた。雌と雄以外にこれほど密接で分かちがたい関係はちょっと他には見つからない。
植物には葉緑素クロロフィル)があり、動物にはそれに対応するかのように赤血球(ヘモグロビン)がある。
植物は日中太陽の光を浴び、CO2から炭素と酸素を分離し澱粉を作る。このときに酸素が外に吐き出される。草食動物は植物の作った澱粉を食べ、それから活動に必要なエネルギーを得る。このときに酸素が消費され、CO2となって体外に放出される。これをまた植物が・・・という具合に完璧なサイクルを形成している。
ところが、そのサイクルの中に途方もなく酸素を消費する機構が組み込まれた。それが火力発電所や自動車や飛行機である。これは太陽の貯蓄たる「化石燃料(炭素と水素)と酸素」を文字通り爆発的に消費するものである。

このために、産業革命以降、空気中のCO2は急激に増加している。ただ、わたしは、グスコーブドリの献身には敬意を表するが、CO2の増加により地球が温暖化するとは考えない。
もちろん、理論的にはCO2は熱を蓄え外に逃がさない性質があるから、温暖化に影響を及ぼすことは間違いない。しかし、今の400や500ppm程度のCO2濃度で温暖化が起こるとは到底思えない。これが1万ppmにもなれば明らかに温暖化するだろうが、その前に人体が大きな影響を受けてしまうであろう。

それはともかく、わたしたち生命の源は太陽であることは間違いない。その太陽の偉大な力を計算してみよう。

太陽と地球の距離は149540000kmである(これは小学校のときに憶えた)。そして、地球の直径はおよそ13000kmである。
太陽の偉大な力の内、いったいどれくらいが地球に注がれているのかを計算してみる。
太陽との距離を10億分の1(1/1000^3)にする。すると、およそ150mになる。この縮尺では地球の直径は13mmほどになる。太陽の直径は地球の109倍であるから、およそ直径1.5mほどの球体を中心にしてそこから150mほど離れたところに置かれた大豆大の球体、それが地球ということになる。
さて、この大豆に注がれる太陽エネルギーの割合は、直径300mの球の表面積に対して、直径1.3cmの円の面積にほぼ等しい。
この比を計算してみよう。S:300mの球の表面積、s:1.3cmの球の投影面積とすると、
S=4Π×(150^2)≒282600?
s=Π×(0.0065^2)≒0.000133?
S:sを求めると、S:s=2124812030:1

つまり、太陽はその持てる力の21億分の1しか地球に注いでいないのである。にもかかわらず、たった今もあちこちで台風やハリケーンが発生し雨が降り風が吹き、潮は渦巻き、地球はダイナミックに動いている。

まさに太陽サンサンではないか。