ある美しい・・・

2011/01/22 11:10


ある美しい情景が わたしの心の一隅に
世捨て人のように住んでいる 

それは ある黎明 紺青色した空気のなかで
たくさんの鐘が 声明を唱えているような情景
びりびりと緊張した それでいて すがすがしい
空気の中で 若者たちの 涼やかな目には
もはや懊悩の影はなく ただ水平線の上に わずかに
頭を擡げ始めた 金色の太陽そのままに
新たな生を宿しているかのようだ

まだ風は吹かない 
若者たちは 万感の思いを込めて 別盃の酒を一口 口に含む 
鼻腔を この世で最後の 芳しい香が満たし
そして 胃の腑を熱く焦がす
敬礼を交わし 彼らは 一斉に機上の人となる
三翔のプロペラのピッチが変わり風が起こりはじめた
彼方には 大きな雲が聳えている
彼らは あたかもその雲を目指すかのように
風を巻き起こして 一斉に飛び立つのだ