jack daws

2012/11/03 01:43

Ken FollettのJack Dawsという作品を読み終えた。と言っても、これで3回目の読了である。

これは本当にエンターテイメントとして最高の傑作である。同じ第二次世界大戦を扱ったジャック・ヒギンズの鷲は舞い降りたを凌駕する面白さと言っても良い。

鷲は舞い降りた―The Eagle has landed にもクルト・スタイナーを初めリーアム・デブリン、それに女スパイのグレイ夫人、カナリス提督の部下であるラードル少佐など、魅力的で忘れがたいキャラクターが多数登場するが、ジャック・ドースという暗号名でフランスに落下傘で潜入しセイント・セシールという城の中に設けられた電話交換所を襲撃するのはたった6人よりなる全員?女性の部隊である。

その指揮官は愛称フリックと呼ばれるFelicity Clairett大尉。
わたしはこれの翻訳を試みて、未だその五分の一くらいしか訳せてはいない。
それでも、この小説にも多聞に漏れず宝探しの要素と復讐の隠し味が鏤められていることがよく分かる。

宝探しの要素としては、たとえば人妻であるフリックとアメリカ人のモンゴメリー付きの将校であるポール・チャンセラーとのロマンスを挙げても良いだろう。それに何よりD-Dayを成功させるためにナチの情報中枢である電話交換所の破壊というこの小説の肝がある。
もちろん、その宝探しが成功することは言うまでもない。その最後のシーンは圧巻である。このシーンのために作者はこの小説を書いた、と思わせるほどである。まさにこれこそがトレジャーだったのである。

そして、もう一方のエンターテイメントに欠かせぬ要素として、フリックを執拗に追い詰めるインターロゲーション(尋問)のプロ、フランク・ディーター大尉が登場する。

しかし、この小説における復讐という名の隠し味はまた格別に微妙で美味である。なぜなら、冒頭フリックは夫であるマイケルが指揮するレジスタンスと共にセイント・セシール襲撃を行うのだが、これに失敗し多数の仲間を失う。フリックにとっては、ジャック・ドースと名付けられた二度目の電話交換所破壊作戦は、その復讐戦でもあったのだ。
一方、ディーターの方も、フリックを執拗に追い詰めた結果、愛人であったステファニーをフリック自身の手によって殺されることになるのである。それゆえに、ディーターは一層の執念を募らせてフリックを追求するのである。

つまり、この小説では、両者の復讐戦が読者にとっては二重の隠し味となって、まさにlicking fingerとでも言うべき、読み出したらやめられない面白さを提供しているのである。