2019-12-09から1日間の記事一覧

超訳 荒野の呼び声 完

2015/11/15 19:54 その日バックは、一日中キャンプを離れず、水場のそばで思案に耽っては、辺りを落ち着きなくうろつき回った。死とは運動の停止であり、生命が生き物の身体から抜けていくことである。このことをバックはよく理解していた。ジョンソーントン…

超訳 荒野の呼び声 29

2015/11/14 10:26 それからというもの、夜も昼もバックは狙った獲物を決して逃がさず、決して休息を与えず、決して樹の葉や若木の芽、柳の葉をちらっとでも見させようとはしなかった。また、この傷ついた雄鹿の喉が焼けるように水を欲していても、近くの小さ…

超訳 荒野の呼び声 28

2015/11/13 12:19 「あんな犬は今まで見たことがねぇ」とある日、ジョンソーントンが威勢よくキャンプを出ていくバックの姿を見てパートナーたちに言った。 「あいつが創られたとき、鋳型が壊されてしまったのさ」とピートが言った。 「俺もそう思うぜ。俺も…

超訳 荒野の呼び声 27

2015/11/10 16:44 ある夜、彼は突如として目を瞠き、鼻をひくひく震わせて臭いを嗅ぎ、波が打つようにたてがみを起毛させ、つい今しがたついたばかりの眠りから跳ね起きた。森の方から例の声(今までとは違ってただ一つだけの声であった)が、はっきりと区別…

今日の迷言:11月11日

2015/11/11 14:08 大事なのは結果ではなく過程である。結果が大事だと思うなら、人生の結果はすべて死である。 要は、犬や猫と同じように生きればよいということだ。人間は彼らと本質的になんら変わりはしないのだから。

超訳 荒野の呼び声 26

2015/11/09 23:04 第七章 響き渡る呼び声 バックがわずか五分の間に千六百ドルをジョンソーントンのために手に入れたおかげで、彼はかなりあった借金を完済し、パートナーたちとともにこの地方の歴史と同じくらい古い伝説である失われた金脈を求めて東部の旅…

超訳 荒野の呼び声 25

2015/11/08 15:40 その冬、ドーソンでバックはまた新たな大仕事をした。それは、英雄的というほどのものではなかったが、彼の名を全アラスカのトーテムポールのてっぺんに刻むことになったのである。この大仕事は特に、三人の男たち全員にとっても感謝すべき…

超訳 荒野の呼び声 24

2015/11/07 10:55 ソーントンただ一人だけがバックの真の主人であった。その余の者たちは彼の目に入らなかった。たまたま出会った旅人が彼を褒め、撫でてもバックの心は冷たく冷えたままだった。あるいは彼に対して大仰に感情表現する者には、立ち上がってど…

超訳 荒野の呼び声 23

2015/11/07 07:00 第五章 愛する主人のために 昨年の十二月、ジョンソーントンの足が凍傷になったとき、彼の相棒たちは、彼の傷が回復するまでの間、彼が出来るだけ快適に過ごせるようにしてやった上で、自分たちは切り出した丸太の筏を漕いで河を上りドーソ…

超訳 荒野の呼び声 22

2015/11/05 22:56 あちこちの丘陵からは清水が解けて流れ出し、目に見えぬ泉から音楽が湧き出した。あらゆるものが解け、曲がり、はじけた。ユーコンは解けた氷の勢いを集め勇壮な奔流となった。河が下から、そして太陽が上から冬を食し始めたのである。空気…

超訳 荒野の呼び声 21

2015/11/03 16:36 メルセデスは、女性であることについての不満をかこっていた。彼女は美しく柔和であり、これまでずっと騎士道的な扱いを受けてきた。しかし彼女に対する近頃の男たちの扱いはとても騎士道的とはいえなかった。か弱い女を装おうことが彼女の…

超訳 荒野の呼び声 20

2015/11/02 11:12 ハルは再び犬たちに鞭を振り落とした。犬たちは、固められた雪に足を沈め力一杯力を込めて胸当てを押した。しかし橇は錨になってしまったかのように動かない。犬たちはもう一度同じことを繰り返したが、息を切らせただけで立ちつくしてしま…

今日の迷言:2015.11.02

2015/11/02 10:59 蜘蛛の巣に搦めとられた蝶。それが日本国憲法である。 敗戦後のほんの一時のムードによって造られ、理想の美しい姿をした芸術作品のような憲法。それが日本国憲法という名の蝶である。 この蝶は、ノーベル平和賞を受けたオバマと同じように…

超訳 荒野の呼び声 19

2015/10/31 18:02 第五章 悪戦苦闘の日々 ドーソンを出立して三十日目、バックとその仲間の犬たちで引く橇を先頭にソルトウォーターメイル経由でスカグウェイに着いた。彼らは皆襤褸布のように疲れ切っていた。バックの百四十ポンドあった体重は百十五ポンド…

今日の迷言:2015.10.31

2015/10/31 17:48 Every pumpkin has its day 今日がどうやらその日らしい。そして、もうすぐ柚子にもその日がやってくる。来年の二月には、四年に一度しかない誕生の日がやってくる人もいるであろう。 Trick or treat, your treasure is my pleasure.

超訳 荒野の呼び声 18

2015/10/26 22:53 またあるときには、この毛深い男は火のそばにしゃがんで頭を両脚の間に入れて眠った。このようなとき、彼の両肘は両膝の上に置かれ、両手は恰も雨をその毛深い腕で防ぐかのように頭の上で組まれた。そしてバックは、火の向こうの円形の闇の…

超訳 荒野の呼び声 17

2015/10/24 17:07 サーティマイルリバーは比較的氷が厚く、彼らは十日間かかると想定していた距離をたった一日で走破してしまった。レイク・ラ・バルジ湖畔からホワイトホースラピッヅまで六十マイルを一気に走り切ったのである。マーシュを横断し、ターギッ…

超訳 荒野の呼び声 16

2015/10/18 20:29 第四章 リーダーシップを勝ち得しもの 「えぇ? どうだい、俺の言ったとおりだっぺ? 俺があのバックが悪魔二匹分だといったのはほんとのことだったっぺ」これが翌朝フランソワがスピッツがいなくなりバックが傷だらけで現れたのを見て言っ…

超訳 荒野の呼び声 15

2015/10/17 22:59 バックは叫び声をあげなかった。彼は体勢を整えないまま肩からスピッツに体当たりしたが、その当たりが余りに強かったために喉を捉えることができなかった。二頭は粉のような雪の上で何度も何度も激しく転びまわった。スピッツはバックの肩…

超訳 荒野の呼び声 14

2015/10/15 20:29 ドーソンに着いてから七日目に、ユーコントレールに通じるバラックスの険しい傾斜を下ってダイイーとソルトウォーターを目指した。ペラールトは何を置いても急ぎで運ばねばならない郵便物を抱えており、なによりも彼はプライドに捉われてい…

超訳 荒野の呼び声 13

2015/10/14 14:16 彼は公然とリーダーシップを脅かした。そして彼は、リーダーに罰せられるべき犬をかばった。もちろんそれには思惑があった。 夜中に激しい降雪があったある日の朝、仮病使いのパイクが起きてこなかった。彼は三十センチほど積もった雪の中…

超訳 荒野の呼び声 12

2015/10/12 22:16 それ以来二頭の間に冷戦がはじまった。スピッツにはリーダーとしての、またチーム一番の経験者としての立場をこの南の地生まれにしては変った犬に脅かされているという思いがあった。何が変かといって、南の地生まれの犬というのは、スピッ…