The burglar who thought he was Bogart 2

2013/05/13 11:41

この作品の主題はアナトリアということになるのだろうか。この国の独立を願う人々とその期待を担う王の孫。そして、その遺産の正しい継承者の証明となるポートフォリオがこの作品の鍵となっている。

ボガートの方は結局、この作品に彩りを添える脇役に過ぎないのだが、それがとてもいいニュアンスになっている。というより、これがなければこれの味わいはかなり損なわれることになったであろう。

アイロワというバニーと懇ろになる美女は、マイケルというアナトリア王の孫にあたるハンサムな男と共にヨーロッパに飛び立つことになるのだが、その前夜、一人でボギーを鑑賞中のバニーの隣の席に腰を降ろす。そして、おそらくこれが最後のプログラムであろう The big shot と The big sleep の二本立てを見るのだ。

バニーはアイロワと2週間、連日全夜ボギーの映画を見るというデートを重ねていたのだが、あるときからアイロワは来なくなった。それでも彼は常にチケットを二人分購入し、二人分のポップコーンを買って席に座っていたのだ。

この作品は間違いなくカサブランカを踏んでいる。カサブランカのオマージュと言っても良いかも知れない。なぜなら、アイロワはこのときバニーに、彼を愛しており、マイケルとのことはアナトリアの独立の為なのだと告白するからだ。

この作品はハードボイルドの正統に分類されるであろう。教養、というかその種の素養無くしてはなかなか読めない。

最後にわたしの好きなThe big sleepが登場し、わたしの好きなドロシー・マローンの名前まで出てきたのは、おそらくローレンス・ブロックからわたしへのプレゼントであったのだろう。