The Burglar Who Thought He Was Bogart

2016/04/07 14:22

というタイトルのローレンスブロックの小説がある。これはどのジャンルに属するのだろう。敢えて言えばPIとでもなりそうだが、主人公のバーニーローデンバールは私立探偵とはおよそ真逆な泥棒家業をしている。表向きの商売は書店の経営者である。

さて、このバーニーシリーズの一つである「ボガートになりたかった泥棒」という作品は、ボガートへの、そしてカサブランカへのオマージュである。
ストーリーは一見とても込み入っているが、いざ謎が解けてみるとそう難解なものでもない。この作品の面白さは、ブロック一流の薀蓄にある。今回それはボガートに関するものである。とても都合の良いことには、

「世に星の数ほど本屋があるというのに、彼女(Ilona=Ilsa)はわざわざバーニーの本屋に足を踏み入れ(”Of all the gin joints in all the towns in all the world, she walks into mine."のもじり)、しかも彼女は、英語をボガート主演の映画から学んだというほどのボガート好きなのである。さらには、なんと都合の良いことに、そのころ二本立てでやっていたボガート映画フェッスティバルに毎晩のごとくバーニーとデートに出かけるのだ。

さぁ、この作品はカサブランカのオマージュである。結論もおよそ見当がつくというものだが、実は彼女、アナトリア公国の王子様の・・・、という設定なのである。

まぁ、ボガートへのオマージュに過ぎない、と言ってしまえばそれまでだが、中にはいろいろと言葉の遊びが仕掛けてあって、できるなら原書で読むのが望ましい。たとえばcandlmass:キャンドルマス(聖燭際)とwoodchuck:地栗鼠(グランドホッグ)にどのような関係があるのかなど、この辺の教養があるととても面白いものになる。