ATAVISM

Old longing nomadic leap,

Chafing at custom's chain ;

Again from its  brumal sleep

Wakens the ferine strain

 

このジョンメイヤーオハラの詩は、ジャックロンドンの荒野の呼び声の巻頭言として有名だ。

下手な訳をするとすべて台無しになってしまうが、敢えてやるならこうなる。

 

古よりの放浪の憧れ

身に巻きつく慣習の鎖に歯噛みする

その長き冬の眠りより

覚めて野生の血を呼び起こせ

 

この詩ひとつでジャックロンドンの文学的センスの良さが分かるというものだ。

 

アタビズムとは先祖返りと訳されるし、荒野の呼び声のエピグラフとしてこれが置かれたのもその意味からであろう。

なぜなら主人公バックは犬であるが、その犬の先祖は狼だからである。人間の文明にすっかり馴染んでしまった犬であるバックがふとした偶然から野生の世界に放り出されてしまうというのがこの作品のストーリーでありテーマだからである。

しかしわたしは、アタビズムの意味を、それよりも今のような時季、立春と解したい。

太陽が再び冬の眠りから目覚めの春へと戻ってきた。その喜び、新たな活動への期待。あるいは回春。復活。そんな気持ちがこの詩には謳われている。

アタビズム。だからわたしはこの詩が好きなのだ。