シュンカマニトゥタンカ・オブワチ

2015/02/19 20:41


Dances with wolves を見た。前にも一度見ているはずだが、これほど優れた映画だったとは思いもしなかった。

何よりも情景が美しい。情景に加え情感が素晴らしい。枝葉のことを言えば、事実の設定やスー族の使う言葉に難点があるらしいが、アカデミー賞ゴールデングローブ賞を同時受賞しただけあって、全編を貫く詩情、それに白人文明への批判精神がわたしにはとても心地よく感じられた。

特にラストのシーンは文句なしによい。

友となったインディアンの戦士が馬に乗り崖の上から「お前はいつまでも俺の友だ」と叫ぶ。

その声を聞きながら冬の細い谷間の道をダンバー少尉とその妻となった「拳を振りかざす女」はゆっくり馬を進めてゆく。

そして白人に撃たれて死んだはずのダンバー少尉の友、狼のツーソックスが崖の上から別れを惜しむかのような遠吠えを送るのだ。

友となったインディアン戦士と狼とがここで視覚的に交錯する。

ずっと昔にジェームズ・アレクサンダー・トムのPanther in the skyという本を読んで、それでインディアンに関心を持つようになった。この本の主人公Tecumseh (テクマセ)は、伝説的なインディアンの英雄である。やはり白人(ロングナイブス)たちに追い立てられ、彼はインディアンは協力して立ち上がらねばならない、と説いて回るのだが結局は戦いに敗れて命を絶つ。

それにしても、アメリカという国はどれほどとんでもないことをしてきたか、である。
もともとインディアンたちには土地の所有という概念がなかった。土地は誰のものでもなく、神がすべての生きとし生けるものに与えたもうた共有の財産だったのである。だから、彼らは何等かと引き換えに白人に土地を与えた後も平然とそこを訪れた。これが白人には気に食わなかった。
インディアンにとっては、そもそも土地は売ったり買ったりするものではないから、契約の意味もよく理解しなかったに違いない。白人たちは白人たちでインディアンは嘘つきである、契約を履行しないなどの理由で彼らを殲滅させる理由とした。いわば文化の違いによる衝突が起こったというわけである。

このことは、今起きているISILの問題を考えてみてもよく分かることである。
キリスト教徒であるブッシュ父はスンニ派出身のサダム・フセインが、彼なりにうまく治めていたイラクが核を隠し持っているなどとして戦争を仕掛け彼を死刑にした。もちろんイラク核兵器などなかった。もしも本当に核を持っていたなら、アメリカは決してイラクと戦争など起こさなかった。

いずれにしろ、ブッシュの始めた戦争が最初のドミノの板となった。次から次へとドミノ板は倒れ、今世界はISILに手を焼く結果となった。この先どれほどドミノが倒れていくか見当もつかない状態である。

アメリカは、イスラムの国はイスラム教徒に任せておけばよかったのである。自分たちがインディアンたちにどれほど悪辣なことをしてきたか、本当の反省の上に立つなら、決して独善的な正義を振りかざしたりはしない。アメリカはいつまでたっても反省しない国なのである。