安涙

2016/05/19 18:15


かの、拉致被害者の一部を日本に連れ戻したことで一躍男を上げた小泉元ライオン首相が涙を流したらしい。

それも、日本人の為ではない。聞くところによると、トモダチ作戦に参加し、そのために被爆したと訴えているアメリカ人に対する憐憫の情からくる涙であったらしい。

なんと美しい姿であろうか。これぞ日本人。とは、わたしは少しも、・・・これっぽちも思わなかった。
むしろ、「アホか?」 と思った。

アメリカという国では、湾岸戦争のとき、対戦車砲劣化ウラン弾を大量に使用した。
劣化ウランというのは、濃縮ウランを作る過程で大量にできる、いわばウラニウムの滓である。滓であるどころか、どこの国でもその後始末に困っている放射性廃棄物である。
このような品をアメリカは、イラクで大量に撃ちまくったわけである。つまり、放射性の性質の悪い廃棄物をただで廃棄することができた、のである。

劣化ウラン弾は、質量が非常に重いので戦車の装甲でも簡単に撃ち抜いてしまう。しかし、それだけでは済まない。装甲にぶち当たって燃え、非常に危険なガスを発生させる。これを吸い込むと、当然に人体は被爆することになる。

イラク兵もこれによって多数が殺され、また現在においても多くの人が後遺症に苦しんでいるわけであるが、アメリカ兵もまた被爆し、被害を受けているのである。
その被害は、アメリカ政府が正式に認めたのかどうか知らないが、被爆した本人に止まらず、その子孫にまで及んでいる。

しかしわたしは、これに対して合衆国大統領が涙した、などという話は聞いたことがない。そもそも、アメリカでは合衆国大統領たる人間が涙を流すなどということは、普通、オバマを除いて、恥ずかしくて誰もやらない。

ところが、元がつくとはいえ、わが国の元首相はこれを惜しげもなく、アメリカ兵のために注いだのである。

ああ、キモチわる。こういうのをほんとにキモいというのであろう。
いったい、この人は何をやりたいのであろうか。トモダチ作戦というのは、そもそも日本が要請して行われたものではない。アメリカの「善意」による作戦であったはずである。たとえそれが建前の話であったとしても、元首相がしゃしゃり出る幕ではない。とっととすっこみやがれ、という話ではないか、とわたしは思うのである。