不可知論についてのある寓話

 

 

2015/07/09 09:54

 

 

 

WGは毎日毎日セッセセッセ、アクセクアクセク働いていた。

 

 

 

齷齪、齷齪働いているうちにやがて大いなる疑問を持つようになった。

 

 

 

オレはいったい何のために働いているのだろう。それにオレっていったい何者なんだろう。

 

 

 

しかしいくら考えても分からない。右隣の#2に聞いても、そんなこと知ったことじゃねぇ、と取り合ってもくれない。左隣の#4は少しましで「そりゃ不可知論ってもんだ。系の中にいて系を知るなんざ、金輪際できたもんじゃねぇ。オレたちはただ一生懸命、一所懸命に働いていりゃいいんだ」とさ。

 

 

 

しかしある日、外からコチコチ、コチコチという音が聞こえてきたかと思うと、小さな白蝶貝の面に3本の針を持つ機械が現れた。WGの目にはそれが何なのかは分からなかったが、その持ち主がこんなふうにしゃべっているのが聞こえた。

 

最近この壁時計の奴、老いぼれたせいかしょっちゅう遅れてやがる。見ろ、俺の電波腕時計よりもう10分も狂っているじゃないか。

 

そう言いながら、その腕時計の持ち主はWGの歯にミシン油を差した。