奔訳白牙 20

2017/01/03 17:13


その間もウサギは彼らの頭上高く舞っている。雌狼は雪の上に座り込んだままで、一方片目は、奇妙な枝よりもむしろ連れの怒りが怖くて再びウサギに向かって跳びついた。彼は歯にしっかりとウサギを咥えて枝をしならせたが、片時もその枝から目を逸らさなかった。前と同様、枝は彼とともに地面までしなった。彼は、枝に打たれる恐怖から毛を逆立てながら身を低くしたが、ウサギは口から離さなかった。枝は彼を打つことはなかった。彼の頭上でしなったままである。彼が動くと枝も動くので、ウサギを咥えたまま彼は唸り声を上げた。彼がじっとしているうちは枝も動かないので、彼はじっとしていれば危険がないことを悟った。しかし、口に染みだしてくる温かなウサギの血は溜まらなく食欲をそそった。

彼の口から彼が最初に見つけた獲物を奪い取ったのは連れであった。彼女が彼からウサギを奪い取ったとき、枝はしなって不安定に、脅すようにぐらついたが、彼女は平然とウサギの頭をもぎ取った。その瞬間、枝は跳ね上がったが、その後は何の問題も発生せず、ただ自然の意志そのままに威厳のある直立した姿勢に戻っただけのことであった。
そして二頭の狼は、この神秘的な枝が与えてくれた恩恵を貪るように食った。

他にもウサギが宙づりになっている狭い通り道がいくつもあって、この狼夫婦はすべてを渉猟し尽くしたのだが、それは、いつも雌狼が先で片目は用心深く後についてまわるというスタイルで罠から獲物を盗む方法を学んでいったのだが、これはやがて来るべき日のために役立つものであった。