感動 さんまのsuperからくりテレビ

2011/01/09 20:16


さんまのからくりテレビを見ていた。大阪は箕面市に住む97歳のおばあちゃん。この人が広島に住む姉を訪ねるという企画だったが、その姉というのがこの妹よりも一回り年上と聞いてまず驚いた。
最初から話をすると、この妹さんは箕面駅の近くでもう何十年も「もみじの天麩羅」を揚げている。どうやら、それが昔からの家業だったようで、兄を戦争に取られ、姉二人も嫁いでいたため、この妹さんはとうとう嫁にもいかぬまま今日にまで至ったらしい。
番組では、おそらく、・・・おそらくというのは、最初からこの番組を見ていたわけではないので、知らないのだが、初夢をプレゼントするとか、そういった企画であったのだと思われる。とにかく、このおばあちゃんのその夢というのが、30年前にこの家を出て、広島に住む娘さん夫婦の家に世話になっているという109歳の姉さんを訪ねるというものだった。その姉が少し前に転んだことを知って、気がかりにしているということであった。

驚くべきは、この妹さんの精神の、と言うと大仰に聞こえるかもしれないが、非常に明朗で明晰なことであった。このくらいの年齢になると、大抵は耳や目が衰え、そしてその感覚受容器官の劣化から精神的にも何か鈍さを感じさせるものだが、この人の場合には、そういった兆候が一切見受けられない。思うに、この人の明るく朗らかな性質が長生きにも通じ、頭の明晰さにもつながっているのだ。

番組が「おばあちゃん。夢がかないましたよ」と言うと、「はぁ、そうでっか。まるで、夢にぼたもちでんなぁ」と応じた。さらに、「行程は線路が良いか、車で行くのが良いか」と訊かれると「車がいいですなぁ。あのリムジンいうやつに一回乗ってみたかった」と言った。
この番組では、もう一つ夢を叶えられた人がいた。名前は松本だったか松島だったか忘れたが、その娘さんの夢は「最近カメラマンの父親の仕事がないので、仕事をさせてあげたい」というものだった。
それがこのおばあちゃんの広島行と共に実現した。実は、この娘さんの父というのは有名なカメラマンらしく、また、おばあちゃんの方は広島の姉に今の箕面市の写真をお土産に持っていきたいということだったので、二人の夢を一時に実現させる好機が訪れたというわけだったのである。
もちろん、この辺は、番組の企画段階で決定していた事項であろうが、本当にわたしや、多くの視聴者や番組の出演者であるさんまや安住紳一郎まで感動させたのは、その偽りや演技では決してないこのおばあちゃんの本当に純な心によるものであったことは間違いない。これは思うに、動物や子供の本音の行動に、わたしたち大人が感動を覚えたりついつい自らを反省するのと同じことであろう。

さて、この番組は一種のロードムービーの趣向を凝らしていた。というのも、途中でおばあちゃんの「神戸牛が食べてみたい」という、その小柄な体格からは想像も出来ぬ肉食系の要求に応えて、神戸の有名店で高級牛肉料理店で肉をご馳走したり、また明石海峡を見てみたいという要求にも応えて、全長10mはあろうかと思われる白塗りのリムジンで明石海峡大橋を渡ったりもしたからである。どのシーンでも、このおばあちゃんが明るさとその頭脳の明晰さを発揮させたのには驚き、感動した。まさにこの人はスーパーオールドレディだった。

そして、ついに番組は佳境に入る。佳境はもちろん、このあばあちゃんと広島の姉が再会したときである。
この再会には本当に感動した。姉は、妹よりもさらに小柄であったが、その頭脳の明晰さは妹に優るとも劣らず、家業を継ぐために独身を通さねばならなかった妹のことを労わり心配する心情には、こちらまで泣かされた。実に麗しい姉妹愛であった。

この企画には医師と看護師も同行するなど、非常に丁寧で気の行き届いた良い番組であったと思う。
しかし、何よりもやはり、この二人で二世紀を生きた姉妹の美しい、お互いを思いやる心情がなければ、大失敗に終っていたであろう。