節電に努めよう

2011/03/13 15:21


たった今、経済産業大臣から電力使用抑制の行政指導が出された。今回の地震の影響により、東京電力管内の多くの原子力、火力発電所の休止が余儀なくされて、必要な電力の供給が及ばなくなってしまったのである。
これには、わたしたち国民の一人一人が積極的に協力していかねばならない。今は春分も近くエネルギー需要の最も少ない時季である。にもかかわらず、このような事態になったことは、今回の地震の爪跡が如何に大きなものであったかを物語っている。

ところで、わたし達の生活上、最も電力を必要とするものは冷暖房、すなわちエアコンであろう。最近のエアコンは、ヒートポンプという方式を採用していて、1kWhの電力量で7kWh(3600kJ×7倍)程度の熱量が得られるようになっている。この入力に対する出力の比をCOP(成績係数)と呼んでいる。つまり、最近の家庭用エアコンは大変効率がよく冷房、暖房が出きるようになっているのだ。
しかし、政府が要請している通り、大して暑くも寒くもないこの時季に無闇にエアコンを利かせることは厳に慎まなければならない。これは国民としての義務であろうと思う。

まず、トイレの便座のヒーターを切ろう。すべて熱を発するものは電力を食うのである。洗髪後の髪は極力タオルで拭き取り、ドライヤーの使用時間を短くしよう。いや洗髪そのもの回数を減らそう。多少髪の毛が乱れていても、その方が日本女性として、いや日本男子としても美しい。

エアコンの話に戻るが、暖房にエアコンを使う場合と石油ストーブを使う場合とでは、どちらがより経済的であろうか。日本の場合、特に東京電力管内ではその発電量のおよそ40%が原子力によるものである。したがって、それ以外の60%から水力発電によるものを除いた部分が火力(石油、ガス)によるものということになる(もちろん、これ以外にも若干の風力や太陽光によるものがある)。
しかし、ここでは話を簡単にするために全ての電力が石油によって発電されるものと仮定しよう。そして、発電所で1リットルの石油を焚いて発電した電気がそのまま家庭にまで届いたとする。すると、家庭用のエアコンで暖房した場合には、8倍(暖房の場合には入力も熱となるから)もの効率で暖房が行えることになるから、8リットルの石油で暖房したのと同然の暖かさが得られる。
これは明らかにエアコンを使った方が石油ストーブで暖房するより効率的であり、余り気が進まないのだが今どきの言葉で言うなら、地球に優しい、ということになる。
しかし、実はこれは相当に割り引いて考えなければならないのである。なぜなら、電気というものは、熱力学の法則に従い、石油のもつ100のエネルギーを決して100のまま変換することは出来ないからである。石油のもつ発熱量が電力に変わる割合、すなわち発電効率はせいぜい40%程度であり、これに送電に伴うロスが生じるので、わたしたちの家庭に届いた頃には35%、すなわち1/3程度になってしまっているからである。したがって、最近のエアコンのCOPが8であるからといっても、原油ベースで計算すれば、せいぜい2,3倍程度の効率に過ぎないと考えた方が良い。
これは、家庭でもビルなど大型の産業施設でも同様で、冷暖房について言うなら、電気で行おうとガスを燃焼させて行おうと、その末端である需要家レベルでは効率的に大差ないのである。

東京電力が100%の体力を回復するには、おそらく数年はかかるであろう。やはり日本は未曾有の危難に直面したのである。
わたしたち日本人は、今まで以上に手を携え相当の覚悟を持って復興に取り組まねばならない。それには、まず身近な節電から始めるしかないではないか。