華麗なるkiyoppy

2012/07/02 23:58


温泉を掘り当てるがごとく、あるいは処女の泉を探し出すが如く、ついに、遂にわたしは源泉を発見したのである。

もちろん源泉徴収のことなどではない。そんなものは去年の暮れにわずかばかりの還付金をもらって終わっている。

なにを隠そう、ついにわたしはわが靴下の香りに代わるものを発見したのである。それは何か? 当ててみるが良い。いや当たろう筈もない。
わたしは日ごろからわが華麗臭の源泉がどこであろうか、とおりにつけ考えていた。これは自慢だが、わたしは己の身体髪膚から発する臭いには相当の自信をもっている。なぜなら、ペットショップに行くたびに仔犬たちが千切れんばかりに尻尾を振りながらわたしのもとに駆け寄ってきてはわたしの手や顔を狂ったように舐めまわすからである。

おそらく、わたしの発する臭いには彼等の原始的本能を刺激する甘美なフェロモンが相当量含まれているに違いない。
そしてこれは、何も犬に限ったことではない。ヒトのメスにも大いに効果を発揮してきた。
過去にわたしと接触をしたヒトメスに何度臭いを嗅がれたか数え切れない。しかもそれは、大概わたしの華麗なる臭い成分がアルコールに溶け込んで発散しやすくなったときに限ってである。

いや、そんなことはどうでもよかった。わたしの華麗臭の源泉についてだった。
わたしはふと気がついたのである。それは、小指の先を耳の穴に突っ込んで何気なくその指の臭いを嗅いだときに天啓のように閃いたのである。
ゆりかもめ! いや違った、ユリイカとわたしは叫びたくなった。
まさにこれこそがわたしの求めていたものだったのである。

わたしは、もう金輪際靴下の臭いを嗅ぐことはないであろう。それ以上に芳しい加羅にも匹敵する臭いを発見してしまった以上、絶世の美人を愛人にした男が妻に関心を示さなくなるがごとく、もはやわたしは靴下を膝より上に扱うことはない。

諸君! わたしはこの新発見を自分だけのものにするつもりはない。喜びは分かち合いたいのだ。嗅がれてみよ、汝の耳の臭いを。そはたとえ須臾の間とはいえ日ごろの憂さを晴らし、諸君を遥かなる原始の喜びで満たしてくれること必定である。