再び鐘について

2012/12/29 18:26


昨年の暮れだっただろうか、二つの映画作品について、ここに日記を書いた。
いずれも鐘の音が印象的な作品で、いずれもわたしに似てハンサムなゲーリークーパーが主演している。

さて、その作品とは「誰がために鐘は鳴る」と「真昼の決闘」である。

わたしは、このニ作品がことのほか好きで、除夜の鐘を聞くよりはこのニ作品を鑑賞しながら年を越すことにしている。

まず真昼の決闘だが、わたしは何が好きかと言って、ゲーリークーパー演ずる保安官ウィルの画面から滲み出てくるような孤独感、そして孤高さに全身が戦慄くほどなのである。
これを見ているだけで浮世の垢が流されていくような気さえする。ウィルの孤独、孤高さとは、まさに狼のそれである。

もう一方の誰がために鐘は鳴るは、ジョン・ダンの有名な詩をタイトルにしている通り、人類普遍の愛を歌っている。といっても作品に描かれる愛は、卑俗な男女の愛であって、人類愛などという高尚な、シュプリームな愛ではない。しかし最後の、ロベルトが弾幕を潜り抜けられず落馬して、もはや自分は助かることはないと悟り、それではせめて若く、そして何よりも自分が愛するマリアだけは生き延びさせようとして、彼女を説得する言葉にこそ、ジョン・ダンの、この詩に込められた精神が顕れている、とそのように思うのである。

さて、わたしとお付き合いいただいた皆様には、どうぞよいお年を迎えていただきたいと心より願っております。