Renaissance man

2013/04/04 10:56


湯川秀樹博士の「旅人」を読んでいて、改めてある感慨を抱いた。

氏は、内面的にはきわめて孤独なひとであった。その幼少時の渾名はイワン、そして権兵衛。イワンは、何か言いたくないこと、意に沿わぬことがあると「言わん」というのが口癖だったからだそうだ。また、権兵衛のほうはもちろん、名無しから来ていて、これは、氏がそれほどクラスの中でも影の薄い存在だったからだそうである。

思うに、湯川秀樹もまたgeekだったのだ。

しかし、わたしが抱いた感慨は上のようなものではない。科学者、いや学者などというものは世間から大抵ずれているものだ。卑俗な学者などというものは真の学者などではありえない。それは曲学阿世の徒であり、あるいはマスコミを賑わして私利を得ようとする似非学者に過ぎない。
わたしは、いまさらながら氏の教養の深さに、いや氏の教養の深さに比し自らが如何に浅薄であるかに気づかされ愕然とさせられたのである。
もちろん、このような感慨は第三者からみて、お笑い種には違いない。なにをいまさら・・・と言われるのが落ちである。
氏は、英語はもちろん、ドイツ語、フランス語をわがものとし、さらには幼少の砌から母方の祖父より漢籍を叩き込まれている。
そして、これは世界共通の言語と言っても良いであろう。数学も得意中の得意であった。
このような人のことを西洋ではルネッサンスマンと呼ぶのであろう、と妬み半ばの賞賛を禁じえなかったのである。