宇虫

2014/08/20 16:35


この虫には極めて謎が多い。

最大の謎ともいうべきが、この虫がわたしたちの内部にもまた外部にも同時に存在するということである。

宇虫は、わたしたちの身中、あるいは心中にも存在するといわれることもあるが、それは感染しているということとは別物である。

極く少数の学者、あるいは天体望遠鏡を有する弱年者に感染の疑いがもたれるが、弱年感染者の多くは麻疹のように一時的なものである。
この虫の感染者数は年齢とともに減少し、またその症状も軽くなるか、跡形もなく消えてしまうかである。

【かつて、紅顔の美少年であったころのわたしも実はこの虫の保持者であり、天体望遠鏡と顕微鏡を保有していた(親はわたしの学業成績アップに賭けて大枚を叩いたわけだが、わたしはその期待をごく普通のことのように裏切った)。

もう一つ後悔がある。紅顔の美少年であったわたしは、望遠鏡で自身と同様に美しい月や土星の輪を観察し、また顕微鏡を使っては自身と同様に美しい蝶の鱗粉や花粉などを見ては喜んでいたわけだが、その美少年の元であるこうがんの精成物を観察してみる、というところにまでにはまだ知恵も及ばなかったし、またこうがんの副精成物の量も足りなかった。これは今から考えれば、大変に残念なことである】

外部の宇虫については 、かつてはその大きさが問題であった。この虫は極めて巨大であり、その外郭は無限大であるとまで考えられていたのである。しかし、近代になり、この虫の年齢がおよそ137億歳ということが分かり、年齢とともにその大きさを増していていることも判明した。

さて、このように巨大な虫については語るには限度がある。この虫について既知の部分は極めて少ない。そもそも初心者がこの虫について生半可な知識を身につけても碌なことにはならない。

利口な者は、この虫の感染者からの情報を利用するにとどまるべきであろう。そうすれば、最小の費用で最大の好奇心を満たすことができる。