奔訳 白牙3

2016/03/21 22:05

男たちは互いに身を庇いあうように二人並んで眠りにつき、すさまじい寝息をたてはじめた。焚火は消え、それとともにキャンプを取り囲んでいた光り輝く眼の輪が狭まってきた。犬たちは恐怖から互いに固まりあい、対になった眼が近づいてくると途切れなく凶暴な唸り声をあげつづけた。その吠え声があまりに凄まじくなり、ついにビルは一度目を覚まさねばならなくなった。彼は、ヘンリーを起こさないよう寝床から静かに身を抜き出すと、消えかけた焚火に新しい木を投げ入れ始めた。焚火が大きくなると、眼の輪も大きく後退した。彼は固まった犬たちを何気なく見た。そして両目を擦すると、もう一度はっきりと見た。それから毛布の中にもぐり込む。

「ヘンリー」と彼は呼びかけた。「なぁ、ヘンリー」

ヘンリーは眠りと覚醒の間をさまよいながら唸り声を上げた。「今度は何だ?」

「いや、なんでもねぇ」と答えが返る。「ただ、また七頭になった、俺はしっかり数えたんだ」

ヘンリーは、眠りに引き込まれながら唸り声を上げたが、ビルの言ったことは確かに覚えていた。

朝になって、ヘンリーは先に起きると、連れを寝床から引きずり出した。日が射し込むまでにはまだ三時間もあったが、時刻はすでに六時を回っている。その暗闇の中、朝飯の用意をし、一方ビルは二人の毛布を丸め橇に括り付けている。

「なぁ、ヘンリー」彼は突如声を上げた。「俺たちは何頭の犬を連れていたっけ?」

「六頭だ」

「そりゃ間違いだ」ビルは勝ち誇ったように宣言した。

「また七頭になったのか」ヘンリーが問い質す。

「いや、五頭だ、一匹いなくなっちめぇやがった」

「そんな莫迦な!」ヘンリーは怒りから叫びを上げると、鍋を離れて犬たちの傍に来るとその数を数えた。

「お前さんの言うとおりだ、ビル」彼は認めた。「ファッティがいなくなってやがらぁ」

「奴ぁ、まるで煙みてぇにあっという間に消えちまいやがった」

「まったくだ」とヘンリーも認めた。「あいつら、奴を生きたまま飲み込んじめぇやがった。奴ぁ、飲み込まれるときに泣き声を上げたに違ぇねぇぜ、ちくしょう」

「あいつはもともとばかな犬だったがなぁ」とビル。

「しかしよぉ、どんなにばかな犬だったとはいえ、こんなふうに自殺するような犬はどこにもいめぇ」と、彼は残りの犬たちを見まわして即座にその特徴を刻みこむと考え深げに言った。「俺たちは、こいつらまで奴と同じ目に会すことはできねぇな」

「ああ、しかし棍棒でこいつらを火の傍から追い払うわけにもいくめぇ」とビルが同意する。「それに俺は、どうもファッティに関しては何か引っかかってしようがねぇんだ」

いずれにせよ、これで北地の旅における犬や多くの人間の墓標に犬のものが一つ加わったわけである。