奔訳 白牙28

2017/03/05 20:15


彼は幼いながらも凶暴であった。ただ、これは彼の兄弟姉妹たちにしても同じである。彼らはそのように生まれついたのだ。彼らは肉食獣なのである。獲物を殺しその肉を喰らうものとして生まれついた。父も母も肉のみで生きてきた。彼が生まれて初めて口にした母乳もまた肉が姿形を変えたものであったが、生まれて一月、目が開いて一週間たった今彼は、母親が半ば消化して吐き出してくれた肉を食うようになっていた。雌狼の乳では五頭の育ち盛りの子供たちに間に合わなくなってきていたのである。

彼は、五頭の中で最も凶暴であった。彼は他の誰よりも大きな擦れたような唸り声を上げることができた。彼の小さな怒りは他の兄弟姉妹を脅かした。最も早く他のものたちを前足で巧みにひっくり返すことを覚えたのは彼であった。唸り声を上げながら顎で耳にしっかりと食らいつき引っ張たり、押さえつけたりするようになったのも彼が最初であった。そして確かに、巣穴の外に出ようとして母親を最も困らせるのも彼であった。

光への興味は日増しに灰色の仔の中で強まっていった。彼はいつも洞窟の入り口へ向かって一メートルほどの冒険を繰り返し、そのたびに連れ戻された。彼はそれが出入り口であることを知らなかった。そもそも出入り口というものがある場所から別のある場所への通過点であることなどまったく知らなかった。彼は、別のある場所というものを知らなかったし、そこへたどり着く方法などなお分からなかった。だから、彼にとって洞窟の出入り口は壁の一つに過ぎず、それは光の壁だったのである。彼にとってこの壁は、外の者にとっての太陽と同じものである。それは、蝋燭の灯が蛾を惹きつけるように彼を惹きつけた。彼は絶えずそれを希求した。彼の中で急速に広がっていった生命力が常に彼を光の壁へと押しやるのである。彼の中の生命力が、そこが彼に運命づけられた外部へと向かうたった一つだけの道であることを教えるのである。

ただ、この壁には一つ妙なことがあった。それは、彼の父(彼はすでに父親を母親と同じようにこの世界に住み、光の近くで眠り、肉を運んでくるものであることを認識するようになっていた)が白い壁を通り抜け、その向こうへ消えてしまうことであった。灰色の仔にはそれが不思議でしようがなかった。しかし、母親がその壁に近づくことを許してくれないので、彼は代わりに他の壁でこれを試そうとして柔らかな鼻の先を硬い障害物にぶつけてしまった。これは痛かった。それで何度かこれを試した後、彼は壁の通り抜けを諦めた。その代わりに彼は、余り深く考えもせず乳や吐き戻された肉が母親の神秘であるのと同じように壁の通り抜けを父親の神秘として納得することにした。