AIはプロ棋士に勝てるか

2017/05/29 10:24


などと書くと、バカかおまえは、と言われそうだ。

すでにアルファ碁が世界一の棋士を打ち負かしているではないか、と。
しかし、考えてみてほしい。例えば、腕相撲をしたとする。相手はクレーンのような腕を持つ鋼鉄のロボット。こんなものを相手にして勝った負けたと騒ぐ者がいるかどうかだ。
あるいは100m走。1000馬力の車と世界記録保持者。そもそもこんなレースを企画するテレビ番組などあるわけもない。

そもそも、AIとは言ってもアルファ碁は碁に特化したプログラムに過ぎない。プロの棋士に勝ったと騒いでいるのは人間側の話で、アルファ碁に勝利の喜びなどあるわけがない。

だから、アルファ碁に負けて涙を流す、というのも考えてみればおかしな話だ。電卓に負けたから、といって泣く算盤名人がいるだろうか。機械と競争して負けたからといって泣く人というのは、よほど機械に対する思い入れが強い人に違いない。
これは、幼児がぬいぐるみに抱く感情と似ているのではないか。
ある意味、これは機械、あるいは命を持たぬ所有物への片思いである。

何が言いたいか。AIに勝利の喜びが無い限り、あるいは敗北の悲しみが無い限り、プロ棋士がAIに負けることはない、ということである。逆に言うなら、少なくとも今の段階ではAIは到底人間には及ばない。
わたしは自由意志なるものを信じないが、それでもまだ人間には、いや生き物にはAIが未だ獲得できぬものがある。
それは自発的な欲望、デザイアーである。AIには生命が本質的にもつ生存への欲望が備わっていないのである。

この意味では、人工知能バクテリアやウィルスにさえ及ばない。AIが真に人間に勝利する日はまだまだ先のことのようである。