ナントカ閣下は、一万とんで何十何歳とか。随分長生きだと思うけど、私はもっとずっと長生きだ。
私に限ったことではない。閣下もこれを読んでいただいている方も、散歩中の犬もホーホケキョと鳴いている鶯も私と同い年だと思う。
ヒトでなかった時代が圧倒的に長いが、私は地球上に38億年ほど生きてきた。
多くの仲間が死に絶えていったが、私はまだ生きている。38億とんで六十七歳。この命は、六十七年間、あまりいい思いをしてこなかったが、それでも38億年、この地上には、海には、空には、私が確かに生きてきたという痕跡が残っている。そして私の身体の中にも確かにその痕跡は残っている。DNAというらしいが、そんな言葉を知らなくとも、私は鳥であったし魚であった。
私は喰い喰われ、糞となり骨となり炭酸ガスとなり水蒸気となりありとあらゆる変容を遂げてきた。
さぁ、次に私は何になるのだろう。そしてあとどのくらい生きていくのだろう。
