無常というのは仏教的な言葉である。
物事は常に変わりゆく。
だから、無常というのは通常のことである。
もしも、何も変わらないということがあれば、それは異常と言って良い。
この宇宙。一秒前の宇宙とはまったく違う。いや、一秒などというのは物理的に永遠ほど長い。1フェムト秒前の宇宙と今の宇宙はまったく違っている。
宇宙が変わってしまっているのに、わたしたちの身の回りが、いや自分自身でさえ変わっていないはずがない。
わたしも、わたしの周りもなにもかもが変わりいくことが宿命づけられている。
このことを人は皆知っていた。現代に生きるわたしたちも知っている。
そのことを無常と呼んで、人の命の短さを儚んだ。
無常とは人の命の短さをいう。
そして、無常は、あまりにありふれた通常のことなのである。
今後、科学、医学の発展によって、ヒトの寿命は飛躍的に延びるかも知れぬ。
しかし、今を生きるわたしたちや、わたしたちの先達が儚んだ無常が無くなるわけではない。
人が無常を感じることがなくなる日が来るとすれば、それはやはり異常と呼ぶべきであろう。