旧交を温める

2011/11/01 17:09


今日はオフだった。天気は良いがただ肌寒いのでシャツの上にピーコートを羽織って一人であちこち歩いた。
今は本当に美しい季節である。太陽の角度のせいか、草花の放つ光が柔らかく、夏とは違って空気の色が全体に淡いので、木々や草花の色が良く引き立つのだ。

ゆくりなくも、去年の冬頃からまったく見かけなくなって、本当に心配していた猫に出会った。
家の近くに廃業したクリーニング店があって、その前の坂道に佇んでいつも箒のような尻尾を振って掃除をしていた歳のいった婆さん猫である。黒っぽいキジトラで色の褪せた赤い首輪をしている。
数十メートル先で姿を認めて、あっと驚いて近くまでゆっくり歩いてニャーと挨拶すると、向こうもミャーと甘えた声で挨拶してくれた。
コートににこ毛が付くのも構わず抱きかかえてやると嬉しそうにしていた。
この猫は、本当に坂道が似合う猫だ。おそらく、坂道にうまい具合に日が差してコンクリートが温まる。それが気持ちがいいからだろう、いつもそこにいる、という気がする。
しっかりと旧交を温めて、何度も何度も頭を撫でてやってそれでバイバイした。

振り返ると、いつものように憮然とした様子で、それでもしっかり坂道の掃除をしていた。