わたぬき

2012/04/01 21:25


エープリルフールとも言われる本日四月朔日 、所用あって丸の内まで出かけた。
時間があったので散策を試みた。昨日の荒天とは打って変わった好天で、やや風があり肌寒くはあったものの、実に気分は爽快であった。

それにしても、首都東京の、いやわが日本の顔に相応しく、丸の内は端整にして気品を備えていると誇らしい気持ちになった。

丸ビルと郵船ビルの間を通り抜けようとして、ふと見ると、何やら立派な彫刻が歩道の端に立っている。彫刻とは言っても、それは巨大な鉄板をパステルカラーでペイントしたキュービズム現代アートで、FinnishのTimo Solinなるひとの芸術作品である。

わたしは、この(The Gurdian:守護神)と名付けられた作品がすっかり気に入ってしまって、道端の立ち木の臭いを嗅ぐ犬のように、しばしその傍らから離れることができなかった。

名残惜しいのを振り切って、丸ビルと新丸ビルの間、馬車通りと呼ばれているところ? まで歩いて、ふと未だ芽吹かぬ並木の3メートルほどある細い枝の先に鶯色をしたスニーカーが一足、つまりご丁寧にも左右二つぶら下げられて風にくるくる回っているのを見つけた。
誰かの悪戯には違いないが、それがわたしには、先ほどの彫刻にも劣らぬ芸術作品のように思えたのだった。

それはともかく、そこから改めて東京駅を見ると、未だ工事中とはいえ、その美貌は思わず息を呑むほどであった。
あれは何という色なのだろう。やはり葡萄色(えびいろ)と呼ぶべきか。陽が当たって、もう少し明るい赤煉瓦色に見える。それに白い窓枠が良く映えて実に美しい。馬車通りからは、左右の巨大なビルに遮られて、全容は分からない。真ん中辺りに大きな濃い緑青の色をしたドームと、それを挟むように左右に銅板で噴いたピカピカ光る球状の屋根のあるのが見える。そしてその背景には、八重洲側にある高層ビルのメタリックブルーが聳えている。

わたしは、ついでにと和田蔵門から坂下門へと宮城の方へと歩を進めた。
堀に浮かぶ白鳥やしきりに水中にもぐって魚を捕まえる鵜らしき鳥を見ながらただ漫然と歩く。
坂下門の警護所で折り返すと、右手のビルの間隙を縫って東京タワーのインターナショナルオレンジと白のツートンカラーが見える。そうすると、あの辺りが芝公園か。一度、ハトバスにでも乗って、新旧のタワー巡りでもやってみるか、などと思ったりもする。江戸紫も乙だしインターナショナルオレンジだって、なかなかどうして捨てたものじゃぁない。

そんな埒もないことを考えながら歩いているうちにパレスホテルの威容を見上げる噴水公園に足を踏み入れていた。そこでしばしの休憩をとり、帰途についた。

一時間半ほどのゆったりとした逍遥ではあったが本当に心身ともにリラックスすることができた。