廻首五十有余年

2012/04/20 12:38


廻首五十有余年 

是非得失一夢中  
   
山房五月黄梅雨  
   
半夜蕭々灑虚窓
  
これは、ハピコメにも使っている良寛さんの作である。
わたしも廻首すれば、早や五十有余年。思えば随分と遠くまで来てしまったものだ。

それにつけても、ついこの間、思いもせぬ人に会ってしまった。そのひとは明け方ふいにわたしを訪れた。・・・もちろん夢の中で、である。小、中、高といっしょだった女性である。懐かしく切ない思いがその日ずっと抜けなかった。

ずっとわたしのことを思っていてくれたらしい。わたしはといえば、自分を好きになる者を好きになれないという天邪鬼な性格ゆえに、ずっとそっぽを向いていた。

思えば、ずいぶんと綺麗なひとだった。綺麗なだけではなくかわいらしさも兼ね備えていた。カモシカのような足首をした短距離選手だった。
中学生のとき、理科の授業中だったと思う、先生が何かの問題を出して隣前後で考えるように言われた。
わたしの斜め前の席だった彼女が後ろを振り向いて、わたしたちに何かを訊いてきた。わたしは、何か意地悪なことを言って彼女を泣かせてしまった。
高校生だった時、200mを走ったわたしは、走り終えて息も絶え絶えになって一人校舎の陰で団扇か何かで煽いでいた。
ふいに彼女が一人で現れて、「煽いであげようか」と声をかけてくれた。
「いや、いい」わたしは、恥ずかしさもあって、すげない返事をした。

その彼女が夢に現れて、あのときの罪を悔いるようわたしを責めたのだ。
わたしは、その日一日、切なくてしようがなかった。