一流が書いた二流小説家

2013/07/05 15:40

 

先日見た映画のタイトルが二流小説家というものだった。

あまり邦画を見ないし、あまり期待もしていなかったので、ストーリーに意外性があって面白いしテーマにも深いところがあり見ごたえがあるのに驚いた。

フォトシリアルキラーと呼ばれる呉井大悟を演じた武田真治がメリハリの効いたいい演技をしている。
二流小説家赤羽一兵を演ずる上川隆也が最初もたついている感があったが、それもだんだん慣れてきたというのか、後半にはその凡庸さがかえっていい味に思えてきたから不思議だ。

ストーリーについては書かないが、おそらくこれの原作はポーのアッシャー家の崩壊のような、近親相姦を強く臭わせたものだったのではないだろうか。アッシャー家の崩壊の場合は兄と妹、そしてこの作品では母親と息子。

息子は、淫売である母親の姿に美を覚える。そして、結局は最後の最後まで母親の支配から逃れることができないで終わってしまうのだ。
また、母親の方も息子への愛情という軛から逃れられなかった。わたしは、この作品はミステリーではあるけれども、ここに隠し味としての大きなテーマが活きているように感じた。

母親と幼い呉井大悟が世間から逃避行をするシーンは、おそらく砂の器へのオマージュになっている。これは多くの鑑賞者が感じたことに違いない。