パスカルについて

世界最初の機械式計算機の発明、パスカルの定理の発見、パスカルの原理の発見、等々、僅か39歳でこの世を去ったブレーズ・パスカルは人類史に偉大な足跡を残している。

余り聞きなれないパスカルの定理とは、「円錐曲線(円錐を任意に平面で切ったときの形。したがって、円もそのうちの一つ)上の任意の6点a~fのうち、隣り合う2点を直線でつないだとき、その延長線上の交点g,h,iは直線上に存在する」というもので、パスカルが16歳のときに発見(証明した記録はない)したものである。

パスカルの定理の最も簡単な例は、円に内接する六角形を描き、この六角形の6つの辺をそれぞれ延長したときの交点g,h,iは一直線上にあるというものである。
パスカルは、10歳のときに三角形の内角の和が180度、つまりニ直角になることを証明したという。おそらく、彼にとって、パスカルの定理の発見はこの延長線上にあったのではなかろうか。

パスカルはまた、物理学にも大きな足跡を残している。圧力の単位にもその名が使われるパスカルの原理の発見である。これは、油圧式ジャッキなどにも応用されるように、一種の梃の原理である。てこの場合、支点を挟んだ二つの点の長さl1,l2とそこにかかる重量g1,g2の関係を表したもので、

l1・g2=l2・g1  となる。

同様に、パスカルの原理は、

s1・p2=s2・p1 となる。(ここに、s:面積、p:圧力)

つまり、パスカルの原理とは、二次元的なてこの原理と考えることもできる。

ところで、1パスカル(1Pa)という圧力の単位であるが、これがいったいどの程度の圧力であるか、想像できるだろうか。

これは、実に髪の毛一本よりも小さい圧力である。しかし、これでは全く実用にならないので、実際にはこれを100万倍した1MPa(1メガパスカル)という単位が一般的に用いられている。
因みに天気予報などで用いられるヘクトパスカル(hectoPa)はPaを100倍したものである。したがって、一気圧はおよそ1000ヘクトパスカルになり、メガパスカルで言えば、およそ0.1MPaとなる。

正確を期して言うなら、1Paとは、1?の面積に1N(ニュートン)の力が加わったときの圧力である。1kgは、およそ9.8Nであるから、
面積が1?の水槽に1mmの深さだけ水を張ったとイメージすれば、これが9.8Paということになる。したがって、これのおよそ10分の1に相当する1Paが如何に小さな圧力であるかが分かる(1Paとは、実に水深0.1mmの圧力なのである)。

ところで、このように数学や物理について深い研究を続けたパスカルであるが、僧侶のように徹底した禁欲的生活を送り、神への信仰を忘れなかった。その証拠のように死後刊行されたのが、あの「人間は考える葦である」や「クレオパトラの鼻がもう少し低ければ・・・」で有名なパンセなのである。