オイラーの宝石

2013/04/10 10:37

 

わたしは、これまで拙文を読んでいただいた方なら分かるとおり、理屈をこねるタイプである。しかし一方では理屈は情に負けるといつも思っていて、人情話にはめっぽう弱い。

ところで、わたしの周りにはいつも本が散らばっていて、自慢だがハーレム状態となっている。そのハーレムのなかで今もっともわたしの寵愛を受けている本は藤原正彦氏の「国家の品格」である。この愛読書は日本語と英語のハーフでなかなかの美人なのである(対訳双書と銘打ってあって、英語のタイトルは、The Dignity of the Nationである)。

 なんの脈略でこの本を話題にしたかというと、著者が数学について語っているところがあって、その中に岡潔という日本の生んだ天才数学者が出てくるのである。御茶ノ水女子大学の数学教授でもある著者は、岡潔を次のように賞賛している。
『・・・例えば、フランス留学から帰ってきた直後には、「自分の研究の方向は分かった。そのためには、まずは蕉風(芭蕉一派)の俳諧を勉強しなければいけない」と、芭蕉の研究に一生懸命励んだ。数学の独創には情緒が必要と考えたのです。その後、やおら研究にとりかかり、20年ほどかけて、当時彼の分野で世界の三大難問と言われていたものをすべて独力で解決してしまうという快挙を成し遂げました。毎日、数学の研究にとりかかる前に、1時間経を唱えていたそうです。・・・』

わたしは理屈をこねくりまわすのが好きで、この性分は死ぬまで変らないだろうが、その一方では、左翼的な、何でも理論でけりがつくというような思想は大嫌いなのだ。

話はいつもどおり380度変わり、しかも少しばかり古くなるが、例のゆとり教育とかいう、日教組の圧力に文科省が負けて掲げたとしか思えない、日本人を劣化させる目的の教育システムにより、円が急落・・・ではなく、円周率が3.14・・・ではなくて、およそ3とかいう、馬鹿じゃなかろうかという数字にされてしまったがために、日本の理科系の産業の基幹を荷う若者たちがまともに被害を受けてしまった、ということについてである。

実はわたしの身長はおよそ2mである。円周率がおよそ3であるなら、174.5センチのわたしは、小数点以下で四捨五入すれば175センチであり、これを1の位で四捨五入すれば180センチ、10の位で四捨五入すれば2mになるではないか。つまり、わたしは高身長、高血圧、高脂血症と3拍子揃った男で、低いのは志とIQだけなのだ。女にもてないのが不思議なくらいだ(この辺の行は、藤原教授と同じく御茶ノ水大学で教鞭をとるツッチーこと土屋賢二氏の影響を受けている)。

そんなことはともかく、オイラーの宝石という、わたしの知る限り世界でもっとも美しい宝石の話である。その宝石に命名をしたのは、かの有名なアメリカのノーベル賞物理学者ファインマン様だ。

しかして、その宝石とは、

e^iπ+1=0

これがそれである。どうだろう? 何というこの神々しさ。わずか自然対数の底e(オイラーの頭文字)、虚数単位のi、そして円周率のπ、さらにはもっとも基本的な数である1と0しか数式には含まれていない。これほどシンプルなスタイルであるのに何か背筋がぞくぞくっとするような、ローレライの歌ではないが、奇しき魔の力に魂も迷うような宝石ではないか。

日教組よ! そして文科省よ! これでも汝らは、円周率はおよそ3ですなどと強弁するか。