縦書きと横書きについて

2011/02/19 18:50


たった今、ふと気がついたことがある。
実は、心技体という言葉について考えていて、なぜこの順番なのかと長く疑問を持っていた。なぜ体技心ではないのか。相撲に限らず、およそスポーツと言われるものはすべて、まず身体を作り、次に技を磨き、そして最後に精神を充実させる。この順を追って上達するものではないのか。だから、これは恐らく順番を意識しての成句ではない。順番よりも口にし易さを重視した言い方なのだ、と考えていた。
しかし、つい先ほど、ふと思いついたのである。それは、これは口にする言葉というよりも、読むための言葉。つまり、文字にすべき言葉なのだ、ということである。

今、わたしが書いているこれもそうだが、今の日本語の多くは、新聞や小説などを除いて、大抵横書きである。しかし、本来の日本語の文書というのは縦書きであった。例え横書きにする場合であっても、今のように左から右へとは書かなかった。この辺の理由――なぜそうなったかということについては知らない。が、もしも墨で文字を書く場合に、横書きで左から右へ書くということが習慣になっていたとしたら、今日の美しい草書の文字は決して生まれなかったであろう。
それにしても、わたしにはまだ疑問がある。それは、なぜ右から左へと書いていかねばならなかったのか、ということである。これは、右手に筆を持ち、左手で紙の端を持って書いていくのであれば、左手で紙を左へと滑らせながら書いていった方が合理的だと思うからである。それに読む方としても、右から左へ読もうと左から右へ読もうと、それは単に習慣の問題であって、慣れてしまえばどちらでも一向に差し支えない筈だからである。

大分横道に逸れてしまったが、本題に戻れば、心技体のこの言葉は、本来の縦書きにして考えればよく分かる。やはりこれは、順番を考慮した言葉なのである。しかもそれは、上から下に大事なものを並べた言葉だったのである。

縦書きと横書きの違いには案外、思っていた以上に大きな違いがあるのかも知れない。