植物の力

2012/05/09 19:41


この世は動物と植物がうまく共存共栄するようできている。粘菌界というものも存在するが、大抵の生き物は動物界か植物界に分類される。
では、動物と植物との違いとは何だろう。
読んで字の如しというか、動物は自ら動く生き物であるのに対し、植物は地に植わった生き物である。植物は地に根が生えたがごとく、ではなく、文字通り地に根を張り巡らせているために動くことができない。いや、というよりも、動くことと引き換えに大地に根を張り巡らせることを選んだのであろう。

さらに動物と植物との違いを挙げるとするなら、心を持つかどうかということがある。もっとも、心と一口に言ってもこれを厳密に定義することは難しい。植物と仲の良い昆虫達がはたして心を持っているかと問われて即座にイエスと答えられる人は決して多くはないはずだ。
蜜蜂に、あるいは蟻に心があるとするなら、彼等に蜜を与え、それと引き換えに花粉を運ばせる植物に心がないと決めつけるのも難しいのではないか。

植物に心があるやなしや、ということとは別に、わたしが思うのは、植物の世界にもわたしたちの目にはなかなか付かない厳しい生存競争があるのは間違いないであろうが、われわれ動物とは違って、彼等というのは極めてクールな生き物であるということである。

考えてみれば、植物というのはすべてが自然任せである。山火事が起きたからといって鹿や猪のように逃げ出すこともできない。風にも雪にもじっと耐えるほかはない。もちろん、寒いとかひもじいとか愚痴をこぼすことも一切ない。ただひたすら、己に与えられた運命を全うするだけである。このような姿から連想するものといえば達磨さんの他にはない。

草木というものは、ただひたすら、生きるという目的遂行のためのみに生きているように見えてくる。
翻って人間はどうだろう。いろいろと理屈はこねくりだすが、決して植物のような境地に至ることはできない。自分とて、植物となんら変わりのない自然の一部に過ぎないのに、生まれた以上は、とついつい分不相応なことを考えてしまうのが人間である。

ただあるがままに、自らの運命を全うするのみと生きることができたなら、これほど結構なことはないはずなのに、である。