馬鹿と阿呆についての考察2

2014/11/16 11:07


日本語の一つの特徴として、他の言語圏の人が驚くほどダーティな言葉が少ないということが挙げられる。しかし、こと頭の悪さに関する侮辱的表現となると、英語と比べても遜色がない。

阿呆、馬鹿、頓馬、間抜け、低能、ノーターリン、粗忽者、愚か者、戯け者、etc.

英語では、

silly, fool, stupid, jerk, simpleton, ridiculous, idiot, moron...などが思い浮かぶ。

大仰に言えば、人類はことのほかに頭の良し悪しにこだわってきたのである。逆に言うなら、頭がよいことこそが人類と他の動物を分けるものであると考えてきたのである。したがって、頭が悪いということは人間より動物に近いと見なされ、故に馬鹿にされる、という理屈が働いているわけである。

しかしまぁ、馬鹿にしろ阿呆にしろ、ほとんどの、いや全人類がこれに属するわけで、ゲーテであろうがアインシュタインであろうが、あるいはコンピュータの父ともいわれるフォン・ノイマンであろうが、この馬鹿の壁から一人として向こう側へ行った者はいない。

馬鹿の壁は、音速の壁とは違って絶対に破ることができない。これは喩えるなら光速の壁なのである。

光速の壁を越えたとき、これはもはやこの世のものではない。だから、昔から「馬鹿は死ななきゃ治らない」といったのである。相対性理論を知らなくとも、昔の人は経験上、馬鹿の壁をよく知っていた。

馬鹿は不治の病である。これを治療しようなどと考えてはいけない。馬鹿は放っておくに限る。これは、かの有名な近藤誠教授に聞いてみてもよい。いや、聞けば3万円も取られるらしいから止めておいた方がよい。馬鹿は放置するに限るのである。

工学技術的には、かなりの昔から人類はみな馬鹿であることが知られていた。ゆえにフールプルーフという手法があらゆるシーンで用いられることになった。

たとえば大陸間弾道ミサイルICBM)である。核サイロに配置された二人の兵士は、お互いに首からキーをぶら下げている。いざ、大統領から発射命令が下されたとき、二人はそのキーを2mほど離れた二つある操作ボックスにそれぞれ差し込みボタンスイッチを有効にする。それから、二人同時にそのボタンスイッチを押すのである。
これにより、ほぼ間違いなく人類の大半が死滅する。

つまり、いくらfool proof(馬鹿除け)を設けたところで、メガトン級の核を何千発も製造し、さらにはその運搬手段も完成させるという愚をすでに行ってしまった以上、いずれ遠からず人類は滅亡を迎えるであろう、ということである。

やはり馬鹿につける薬はなかった、ということなのである。