数楽

2016/06/17 12:17


わたしは音楽の授業が嫌いだった。このことは前にも書いた。音楽の授業は嫌いだったが、綺麗な先生が歌ってくれるローレライなどはとても好きだった。わたしは美に対するセンスが人一倍優れていたからだと思う。

算数はどうだったか、というと勉強はしなかったがまぁまぁできたし、面白くもあった。数学も数楽といっていいほど楽しいものだった。
日本では小学校までを算数、中学以降を数学と呼び方を変えるが、あちゃらではマスで区別はない。算数と数学を区別するのは日本の教育政策上のものでしかないのだ。

わたしは、ミュージックを音楽と訳したのだから、マスは数楽がいいんじゃないかと思う。誰の言葉だったか忘れたが、「音楽は感性の数学であり、数学は理性の音楽である」というのを聞いた。

音楽と数学は上のように密接な関係がある。というよりも、すべての学問や芸術、それにスポーツは密接な関係があるのだ。だから、一芸に秀でた者が百芸に通じていても何ら不思議ではない。

ところが、わたしのように真性音痴の者もいれば、数学音痴の者もいて、わたしなど自分の音痴を棚に上げて、なんでこんな簡単な計算ができないのだろう、と思うこともしばしばである(なんたる傲慢)。

たとえば、A4の白紙を見せて、「この紙には秘密があります」と言う。「それが何か分かりますか?」

「???」

まぁ、普通の反応である。

続いて、

「この紙をこのように半分にしたら何サイズと呼びますか?」と訊く。

ちらほらと手が挙がり、

「A5です」と言う。

「はい、その通り。では、A4とA5では縦横の比は同じですか、違いますか?」と問うと、

しばらく考えた後、ようやく、

「同じです」という答えが返ってくる。

これは、わたしが実際に体験した新入社員たちの反応である。

さらにわたしが、

「それでは、その横と縦の比は1対いくらでしょう?」と訊ねると、

「???」となる。

「計算してみましょう」と促しても、どう計算していいものやら分からないらしい。何とか、解決の糸口を見つけて答えを見出すものが十人に一人いるかどうか、である。

果たして、これは数学なのだろうか、それとも算数なのだろうか?

わたしは、これは数楽でなければならない、と思う。

答が分かった時、彼らはきっと 「Aha 体験」(Eureka effect) を得て、すごく楽しい思いをするに違いないだろうから、である。

数学よ数楽であれかし!