Child44

2013/01/09 13:20


この本を読むのはこれで二度目になる。それにしても、である。この著書の作者はわずか27歳でこれを書いた。そして一躍世界的に有名な作家になった。

敢えてジャンル分けをするなら、この本はミステリーということになるのであろうが、単なるミステリーの域ははるかに超えている。
なぜなら、この本に描かれているのは旧ソ連の闇と言っても過言ではない社会情勢だからである。

もちろん、その社会情勢自体がこの小説の本筋ではない。あくまでも背景ではあるのだが、その背景が読者にとっては、ある意味で非常に魅惑的なのだ。
密告社会、隣人も友さえもが自分の密告者となりうる恐怖社会、それが旧ソ連の真実である、と作者は述べているのである。

そのような社会が、本当にソ連、ひいては共産主義社会の在りようであるなら、誰がマルクスレーニン主義など信奉できよう。
だが、作者の筆には、まるで共産主義に対する容赦のない憎しみがこもってでもいるかのようで、読者をぐいぐいとその暗黒社会に引き込んでいくのだ。

そして、レオとその弟のアンドレイ、そしてレオの妻であるライザ、様々な人間模様を織り込みながら、終に糸の端と端が出くわすように、連続小児殺人事件は圧倒的な結末を迎える。

これは真に優れたミステリーである。ただただ、作者の才能に驚嘆するばかりであった。


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