ダブルクロス

2015/12/24 12:07


CIA(The Company)というのを無料でやっていてこれが面白い。

サーシャというCIAにもぐりこんだダブルエージェント、というよりもKGBの手先を見つけることが一つの大きな山場になっており、まもなくその疑いを持つ男が見つけられ、尋問、というよりも拷問にかけられる。


この男の親友である本編の主人公は、どうしても彼がダブルとは信じられない。だから、その疑いを晴らすべく奔走するのだが、そこから得られる情報は、この男の疑いを一層強めるばかりなのである。

ところが、このサーシャの存在をCIAに知らせ、妻の心臓手術を理由に自らのアメリカ亡命を企てる男がソ連に帰国した途端に当局に身柄を押さえられ、新聞によるとどうやら死刑にされた、とのニュースがCIAにも入る。ということは、この死刑にされた男は本当にアメリカに亡命するつもりでサーシャの情報をCIAに与え、それがためにソ連で死刑になった、ということである。

 

これでいよいよ主人公の親友がダブルである信憑性が高まった。

ところが、彼が本当にサーシャであることがなおも信じられない主人公は伝手を頼りに亡命を求めた男が本当に死刑になったかどうかを確かめようとする。その結果、この男は死刑になってはおらず、亡命劇はKGBによって仕組まれていたものであったことが判明する。

というような筋書であったわけだが、ここで面白いのは、主人公の上司で筋金入りのスパイであるジムという男である。
彼は当初からサーシャの正体が主人公の親友であることを確信しており、その退役(しょっちゅう煙草を吸っていることから、おそらく肺がんにかかっている)の日にも、皆から罪滅ぼしの感情からか拍手で迎えられた男に対し、捨て台詞を吐くのである。
「俺はおまえがサーシャであることを知っている」と。

 

さて、これに大きなどんでん返しが待っていることは言うまでもない。裏には裏があり、そのまた裏があるのである。スパイ映画なのだから、これは予期しない方がおかしい。

主人公の友人は、最初からソ連のスパイとしてCIAに潜り込んでいたのである。そして、アメリカで家庭を持ち子供も拵えた。
彼がKGBになった経緯も映画の中で明らかにされている。彼の父親は1929年、大恐慌の年に橋の上から飛び降り自殺をしているのだ。このことが彼を資本主義から共産主義礼賛へと偏向させた、のである。

 

まぁ、あり得ない話ではないが、そのような動機に捕われる必要もない。
この作品が面白いのは、そのリアルさにあるのは違いないが、わたしがリアルだと感じたのは、上の退役したジムという男が温室で趣味の蘭をみているところに主人公が訪れるシーンである。

鼻にチューブを入れたジムは、自分にとってはまだ青臭さの残る主人公に一くさり言ってのけるのである。

「蘭というのは人間以上に狡猾だ。蠅をおびき寄せるために雌蠅の臭いを出し、雌の蠅のように擬態をする。そして近づいた雄の蠅を捕まえて喰ってしまうわけだ」というようなことを言った後、

アメリカの中枢にもソ連のスパイが潜り込んでいるよ。・・・ヘンリーキッシンジャーなどもそうだ」

たとえ映画とはいえ、こんなことを言ってしまって良いのだろうか、と?思うような発言である。それともアメリカではすでにキッシンジャーソ連のスパイであったことは常識になっているのだろうか。