腰パンマン

2010/02/14 15:18

今日はわたしには縁のないセント・バレンタイン・デイという日だそうである。これまでのところチョコにも縁がなかったが、バランタインとかいう酒とも縁がなかった。もしも、この両方を同時に得られるとするなら、バランタイン入りのチョコボンボンという奴が最後の望みというところか。

でも軽口はこの辺にしておこう。ただでさえ持ち合わせない品格を疑われることになりそうだから。

今日はまたスポーツ番組が賑わう日でもある。わたし自身は、実は冬季五輪には余り関心がない。サッカーの日韓戦を見ながらビールを飲むのが今からの楽しみといったところである。

しかし、今日産経を読んだばっかりに、五輪にも関心を持たざるを得なくなってしまった。
というのも、国母とかいう今世間の注目を一身に浴びているハーフパイプとかいうスノーボード競技選手の件である。
この選手、なんと素晴らしいことに、バンクーバーへと向う機中、公式服装を腰パンでシャツを腰から出す格好であったという。

素晴らしいと形容したのはもちろん皮肉のつもりであるが、もしもこの若者が、「ご心配、ご迷惑をおかけしすみませんでした」などと謝らず、一貫してその反抗的(?)な姿勢を貫いたなら、わたしは本気で天晴れと彼を擁護したであろう。
しかし、彼は実に詰まらない男へと成り下がってしまった。単なる粗忽者に過ぎなかったことを露呈してしまったからである。

若者が権威などに反抗するのは決して醜い姿とは思わない。むしろ極めて自然なことと言ってもよい。しかし彼の場合、もはや世間はTPOを知らぬ単なる愚か者としか評価しないだろう。もしも彼に起死回生の好機があるとすれば、その素晴らしい競技能力を世界が注目する中で存分に発揮する以外にはない。だから、がんばれ国母と言っておこう。
わたしは、すべてのスポーツ選手は素晴らしいと信じ、君が若者であるから応援をするのだ。

ところで、もしもわたしが本当に恐れる若者がいるとすれば、それはこの国母君のような若者ではなく、普段は腰パン姿で銀のチェーンなどをチャラチャラさせ、両脇にはいつも可愛いねぇチャンを二人ばかり侍らせ、バランタインなど毎夜のように開けている・・・、普段はいかにも退廃的な乱れた生活を送っているようでありながら、密かに哲学書などを読み、ときには高等数学の問題を解いたりして暇を潰している、そして、いざ公の席に立つとなると、きちんとした清潔な身なりの上に静かな笑みをたたえ、何か気の利いた台詞を吐いて見せるが、本人はそのこと自体が実はばからしくて笑っているのだ、というような若者である。

こんな若者がいたら、本当にわたしは恐ろしくてしようがないだろう。いつかきっと世界は彼のものになってしまう気がして夜も眠れないに違いない。

実はわたしは、このような若者を一人だけ知っている。しかし、それは残念ながら、というより幸いなことに二次元の世界に住む人物である。名をウィル・ハンティングと言う。そして、この男も詰まらぬ事に世界よりも愛の方を選んでしまった。バレンタインの魅力にはやはり誰も勝てないということか。

ところで、いい歳をした老人といってもよいおじさんが腰パン同様の姿を晒しているのを世間はなぜ看過しているのであろうか。
この男は決して二次元の人物ではない。それどころかこの国の最高実力者とも目される政治家なのである。そのような男が、この国母君と何ら変らぬ精神性しか持ち合わせていないというのに、なぜ世間は口を噤んでいるのか。
もしも国母君が機中だけではなく、入場行進でも腰パン姿であったなら、著しく国威を傷つけたであろうことは間違いない。
然るに、国の最高実力者とも言われるこの男の今上陛下に対する先の言動というのは、一見目にはそれとは知れないがまさに腰パンマンそのものではないか。