2020-01-01から1ヶ月間の記事一覧

奔訳 白牙31

2017/03/11 23:07 第四章 世界の壁 母親が狩のために巣を離れるようになったが、その頃には、仔は出口へ近づくことが禁じられている訳をよく理解するようになっていた。これまで何度となく母親の鼻先や前足で制されていたからというだけではなく、彼の中に恐…

奔訳 白牙30

2017/03/11 21:59 そして遂に、灰色の仔に、これまで壁の入口に現れたり消えたり、あるいは腹這いになって寝ていた父親の姿が二度と見えなくなる日がやってきた。それは、比較的緩やかな二度目の飢餓のときであった。雌狼はなぜ片目が帰ってこないのか知って…

奔訳 白牙29

2017/03/06 20:07 実際、灰色の仔にはまだ思考力が与えられておらず、少なくとも人間が考えるようには考えるということができなかった。彼の脳はぼんやりとしていたのである。しかし、彼の下す結論には人が到達する結論よりも鋭くまた深いものがあった。彼は…

奔訳 白牙28

2017/03/05 20:15 彼は幼いながらも凶暴であった。ただ、これは彼の兄弟姉妹たちにしても同じである。彼らはそのように生まれついたのだ。彼らは肉食獣なのである。獲物を殺しその肉を喰らうものとして生まれついた。父も母も肉のみで生きてきた。彼が生まれ…

奔訳 白牙27

2017/03/04 00:17 第三章 灰色の仔 彼は兄弟姉妹たちと違っていた。彼らの毛には既に雌狼から受け継いだ赤味が現れていたが、彼だけは特別に父親のそれを受け継いだようであった。彼だけが一腹の仔たちの中でただひとり灰色だったのである。彼は純粋な狼の血…

奔訳 白牙26

2017/02/28 06:26 ハリネズミは毬を開ききらないうちに敵に気がついた。その瞬間、山猫が前足のパンチを繰り出した。閃光のごとき速さであった。前足の硬い爪が猛禽の鉤爪のように弧を描き柔らかな腹をえぐって元の位置に戻った。もしもハリネズミが完全に毬…

奔訳 白牙25

2017/02/20 20:54 彼は、川床が通常よりも大きく曲がったところで岩の端に頭を擦り寄せるようにして前を伺ったが、そのとき眼の端に何かを捉えてしゃがみ込んだ。それは足跡の主、大きな牝の山猫であった。彼女は、朝彼がしゃがんだと同じようにそこにしゃが…

奔訳 白牙24

2017/02/14 19:42 ハリネズミは栗の毬のように丸くなり、防御のために長く鋭い針を全方向に向けて立てた。若い頃、片目はこれと同じような状況で針を立てた毬に近寄りすぎて、予期せぬ尻尾の一撃を顔に受けたことがある。針の一つが鼻に刺さって、その火のよ…

奔訳 白牙23

2017/02/09 20:20 連れは不安そうな目を彼に向けた。そうして、しばらくの間、彼女は低く唸り続けていたが、片目が一線を越えてしまったため、それまでのただの唸りだったものが一挙に牙をむき出しにした鋭い吠え声となって喉を突いて出た。それは、彼女自身…

奔訳 白牙22

2017/02/05 17:09 洞窟の入り口に横たわり気持ちよさそうに寝てはいるものの、片目は空腹だった。彼はふと起きあがると耳を立て明るい外界の様子を伺う。四月の日差しが雪の大地をてらつかせていた。実はまどろんでいた時、どこからか水の流れが滴り落ちる囁…

文化とエピジェネティック

2017/02/05 20:55 最近の研究によると、人間の文化とエピジェネティックには関係があるらしい。 小学生の頃、個が獲得した形質は子孫には遺伝しないと習ったが、これが嘘っぱちであったことがはっきりした。狼の雄が人間を恐れるのはそのY染色体上のDNAを修…

奔訳 白牙21

2017/01/03 20:50 第二章 巣 二日間、雌狼と片目はインディアンキャンプの傍をうろつき回った。片目は、連れがキャンプに魅了させらてしまったかのようにいつまでも離れたがらないのを横目に非常に不安で気がかりであった。ところがある朝、空気が切り裂かれ…

この男(ノーベル平和賞受賞者)は何をやったのか

2017/01/16 22:08 この男とは、オバマではない。今年94才になるベトナム戦争時代の国務長官、ヘンリーAキッシンジャーである。 ノーベル平和賞受賞者だが、その受賞理由というのがベトナム戦勝終結への道筋をつけたことだというから笑わせてくれる。可笑しい…

奔訳白牙 20

2017/01/03 17:13 その間もウサギは彼らの頭上高く舞っている。雌狼は雪の上に座り込んだままで、一方片目は、奇妙な枝よりもむしろ連れの怒りが怖くて再びウサギに向かって跳びついた。彼は歯にしっかりとウサギを咥えて枝をしならせたが、片時もその枝から…

奔訳 白牙19

2016/12/31 21:20 片目は彼女の傍を落ち着きなく歩いた。再び彼女は不満を募らせてきており、探していたものを早く探さねばならないことを思い出していたのだ。彼女は踵を返すと森の方へ駈け出したが、このことは片目を安堵させ、木々の中に身が隠れるまで前…

奔訳 白牙18

2016/12/31 18:28 この生殖を巡る戦いは、両側を二人のライバルに挟まれた三歳の若狼にとっての初陣であり彼の人生の成否がかかるものであった。彼らの目に映るのは雪の上に佇んで微笑を浮かべている一頭の雌狼である。しかし、老狼は賢かった。恋においても…

出来すぎ

2016/12/18 20:32 トランプ次期大統領がツィートでスペルを間違えたらしい。 しかも、シナがかっぱらおうとした無人潜水機の件でだ。 トランプが間違ったのは、シナが前代未聞(unprecedented)のことをやってくれた、と書きたかったところを、 unpresidente…

奔訳 白牙17

2016/06/08 13:54 今や休息したり眠っている狼がほとんでである。中には満腹でいがみ合ったり喧嘩を始めたりしている若い雄狼たちもいて、これが数日、群れがいくつかに分裂していくまで続いた。飢饉は去ったのである。狼たちは今、獲物が豊富な地域におり、…

ワンさんへ

2016/12/02 09:12 ワンさん、こんにちは。Kiyoppyです。 わたしには未満という言葉の意味がまだよく理解できていないようで、あいすみませんでした。なにしろ、20歳未満というのをわたしは、18歳と19歳のことだとばかり思っていましたから、はい、14,5の…

聖の青春を見た

2016/11/30 22:44 久しぶりにいい映画を見た。これは誰の原作だったのだろう。忘れてしまったが、もちろん、いい原作なしにはいい映画はできないであろうから、原作も褒めなければならない。 さらに言うなら、棋士村山聖の短い人生が素晴らしくなければ、そ…

第二夜(羅普騾素の悪夢)

2016/11/21 22:13 尾はなし、という夢の終わり方をしたので、この夢の話がおもしろかったのか、それともおもしろくなかったのかは分からないなぁー、などと、ぼんやり考えていたら、It's time to wake up, you lazy bastard.という怒鳴り声がして、そちらを…

光陰矢の如し

2016/11/07 15:19 英語で言えば time flies like an arrow であるが、どちらにも矢が使われているのが面白い。 わたしは、光陰の文字が好きだ。光陰は光と影の意味であるが、世の中すべての出来事ととってもよいだろう。ただわたしは、これを曲解して、時間…

日時計

2016/11/04 08:21 日時計は日の当たる場所に置け ベンジャミンフランクリンの言葉だそうである。これの意味は、才能は隠すな、あるいは才能ある者を無駄にするな、であろう。 考えてみれば、わたしも日の当たらない道を歩んできたな。 このような、自惚れの…

会話

2016/10/30 16:50 一卵性双生児の会話というものを考えていて、これは詰まらないだろうな、という結論に達しました。 話を極端にして、この二人が生まれたときからずっと同じ衣服、同じ食事、同じ環境で同いじ体験をしてきたとしたら、彼らはほとんど会話す…

リンゴの数え方の哲学

2016/10/15 07:51 日本の算数では、 3×7と7×3は違うものらしい。 たとえば、一皿に3こリンゴが載った皿が7つあったとする。リンゴは全部でいくつあるでしょう、という問題に 7×3=21 と答えると、ペケをもらってしまうらしい。 わたしには理解不能のことであ…

499

2016/10/11 08:13 という数字を聞いて、はっと閃く人は宇宙に相当の関心があるひとであろう。 499秒は8分19秒である。この数字は、太陽の光が地球に到達するまでの時間である。 地球から太陽までの距離は、これに光速を掛けてやればよい。それは、ざっと149,…

現実はシミュレーションなのか

2016/10/10 21:45 これは、近頃のゲームやVRといった流行の副産物なのだろうか、現実の世界を、それこそデカルトの時代にまで先祖返りしたかのような、シミュレーションなのではないか、といった説をよく見聞する。 デカルトは、我思う、ゆえに我あり、とし…

哲学とは虫垂である

2016/10/02 10:01 昔、哲学は太陽であった。今哲学は月である。いや、太陽でもなければ月でもない。もはや今それは虫垂である。 哲学は昔、数学であり物理学であり化学であり生物学であり心理学であり、すべてであった。ところが今、それは母屋を取られて軒…

時計算とゼノンの背理

2016/09/24 22:09 先日、あきれたカメの話をした。これはゼノンの背理と言われる、パラドックスでも何でもない、良くできたトリックの話である。こういう手のものを詭弁数学と言うのであろう。 話はこうである。カメとアキレスがかけっこをした。そのままで…

アキレスとあきれたカメ

2016/09/21 09:36 かのゼノンの背理である。カメはなんとちっとも進んではいなかった。なぜか? このカメ、動く歩道を逆走していたのだ。しかも、その速度が動く歩道と同じ。相殺してゼノンから見るとゼロ。ゼノンは、バカだなー、このカメ。これじゃー俺の…